「ゴジラは戦後復興の象徴的存在」ゴジラ-1.0 sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラは戦後復興の象徴的存在
ゴジラ生誕70周年記念作品。70年のいろいろな重みが込められた作品でした。
VFXは間違いなく邦画史上の最高レベルでした。特撮だった頃と比べものにならないくらいの現実感があり、不自然なカットや遠近感は当然ありませんでした。少し寂しいですが…。ただ、最近の洋画版ゴジラ作品と違い、伝統的な日本版ゴジラ作品の作風を受け継いでいて、ゴジラが建物を破壊するシーンや逃げ惑う人々を踏みつけていく姿が当時のイメージ通りに再現されていました。また、ゴジラのデザインは特撮だった頃の名残を残しているように感じました。体格や立ち姿は後の作品に近く、特に顔が伝統的な日本版の造形でした。
物語は戦後の人々を主軸にしていて、主演の敷島浩一を演じた神木隆之介さんと大石典子役の渡辺美波さんのペアは本作の物語にピッタリでした。その脇を固める吉岡秀隆さん、佐々木蔵之介さんも昭和感のある陽気な演技で好感が持てました。
私は、ゴジラはこの70年に渡って無知蒙昧だった日本人に喝を入れてきた存在だったと思います。「情報統制が日本のお家芸」というセリフもあったように、戦時下の日本人は盲信のごとく国の命令に従いました。それを戦後に見た焼けた街で実感し、ゴジラが再び破壊して周る光景を戒めとしてきたように感じます。放映当時のゴジラの評判は分かりませんが、ゴジラが戦後数年で作られた意図はあの恐怖と怒りを糧にするためだと思いたいです。
本作も含め、日本人としてこの先も残していかなければならない映画です。
コメントする