「リアリティーをとことん追求した「シン・ゴジラ」から、「体感型映画」へと変貌を遂げ、今だからこそ生み出せた初代「ゴジラ」の前を描いた作品。」ゴジラ-1.0 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティーをとことん追求した「シン・ゴジラ」から、「体感型映画」へと変貌を遂げ、今だからこそ生み出せた初代「ゴジラ」の前を描いた作品。
本作は「ゴジラ」の生誕70周年記念作品で、“日本製作の実写作品”としては「30作目」となります。
そこで、30作品の変遷を考えると、最大の転換期は第29作の「シン・ゴジラ」であったといえます。
着ぐるみがメインだった、1954年の第1作「ゴジラ」から第28作「ゴジラ FINAL WARS」(2004年)までの「ゴジラ」シリーズと、VFX(CG)を駆使した第29作「シン・ゴジラ」からは映像表現が格段に進化しています。
そして、「シン・ゴジラ」までは、公開当時の「今」を描き続けていた仕組みがありました。
ただ、映像技術の飛躍的な進化で、「過去」をリアルに表現することが可能な時代に突入し、戦後の復興期の日本をリアルに表現した「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)がその転換点となった作品といえます。
まさに、VFXのトップランナーとして「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズを手掛けた山崎貴監督だからこそ、これまでの「ゴジラ」映画の仕組みを変えることを自然と成し遂げられたのでしょう。
時間軸を終戦末期・戦後間もない「過去」にして、1954年の第1作「ゴジラ」の前を描いています。
本作の最大の成果は、最先端のVFXを駆使して、どの角度が最も迫力が増すのかなどを考え抜いて作った「体感型ゴジラ映画」となっている点です。
そこに主軸を持っていっているので、脚本の面では、ややツッコミどころも散見されます。
例えば、「銀座にゴジラが出現」というニュースを聞いて、ゴジラが暴れまくって大群衆が逃げ回っている場所に行けたとします。
「銀座」ということしか情報がないのに、あの状況下で人が出会える確率は物凄く小さいのが現実です。
また、終盤やラストの展開も、もう少し緻密な構成が必要な気もします。
とは言え、それは求め過ぎなのかもしれません。
本作は、“日本製作の実写作品”初となる「体感型ゴジラ映画」として見れば十分すぎる成果を生み出していて、その時点で「★5のレベル」には達していると判断できます。