「彼はホントに○○なの?」零落 ボンボンのんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
彼はホントに○○なの?
長期連載が終わり、理想とする作家像が強すぎて新作が手つかずスランプに陥る漫画家の話で斎藤工が不器用な人間像を表現していた。
漫画だけでなく、流行り廃りの入れ替わりが早いエンタメの世界の厳しさを痛感させられる内容だった。
なんだかちょっと共感できる。
彼は、理想を持ちながらも形に出来ない自分に対して酷く苦しんでいたようだ。
わかってもらえる人に届けば良い
というのは作家のエゴだろうか。
確かに、出版社も冒険作品にリスクを抱える余裕はない。
漫画を手にするのは結局バカしかいない、とどこかで嘆いているのか。
結局バカでもわかるもので量産されていくのがエンタメの基盤の支えなのか。
命を削って書こうが、購入層に響かなければ意味がない。
知名度がなければ刺さるかも知れない購入層に届かない。
大衆の迎合に流されることも
いっそ漫画家をやめる勇気もない。
ジレンマの中で彼は苦悩する。
吉沢悠演じる同級生が、子供がいる家庭の父親という主人公とは対比の役で出ていた。
せっかく褒めても不貞腐れるし、
近くにはいて欲しくないタイプかな。
でも、最後まで彼は終わっていないと思う。
救いは以下の3点。
・人を惹きつける画力はある
斜陽とはいえ、それなりに前列に置かれているので、やはり書店からも認められてるということ
新作が出たらそれなりに注目はされる。
・どんな風俗嬢でもきちんと受容れるところから、職業や立場から下に見たりしようとしない。
責任のない愛には興じることができる人間らしさ
・ブタクサ言いながらも、他人の漫画には目を通して、大衆ウケが何なのかをきちんと把握しようとする姿勢。
彼は、果たして化け物なのかしら?
私にはそうは思えなかった。
ちょっと深煎りすると面倒な作家気質ぐらい。
女アシスタントや、売れる売れないで手のひら返すような編集者のが余程化け物に思えた。
地方の、百円で並ぶ古本漫画事情などにも触れていて、都会だけのエンタメ消費では終わっていないところが良かった。