「カーチェイスにも血みどろの死闘にも切ないドラマにも抜かりなし!韓流アクションの無双を思い知らされる『グロリア』ミーツ『レオン』」パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
カーチェイスにも血みどろの死闘にも切ないドラマにも抜かりなし!韓流アクションの無双を思い知らされる『グロリア』ミーツ『レオン』
釜山港で中古車の修理して輸出するペッカン産業の裏の顔はワケありな人やモノを配送するサービス「特送」の請負。ドライバーのチャン・ウナは野球賭博ブローカーのドゥシクとその幼い息子ソウォンをソウルから釜山まで運ぶ仕事をペク社長から振られて渋々待ち合わせ場所で待機しているとそこに現れたのはソウォンのみ。ソウォンの背後から男達が追ってくるのを見たウナは咄嗟にソウォンを拾って逃げる。ソウォンを追っていたのは野球賭博を裏で牛耳っていた悪徳刑事のギョンピル達。彼らはソウォンが肌身離さず持っている貸金庫の鍵を狙っていたのだった。
挨拶代わりのツカミで繰り広げられる『ザ・ドライバー』、『トランスポーター』シリーズ、『TAXI』シリーズ、『ドライヴ』、『ベイビー・ドライバー』といった作品群へのオマージュに塗れた釜山市街の入り組んだ路地を爆走するカーチェイスが見事ですが、それをポーカーフェイスの女の子ウナがドリンク片手に淡々とこなす様が凄まじくカッコイイ。こんな邦題にしてしまったので誤解されてしまいますが、カーチェイスは本作の魅力のほんの一部。一番のキモは厄介な事件に巻き込まれてしまったウナとソウォンが逃避行の中でぶつかり合いながら心を通わせていく『グロリア』や『レオン』のようなドラマ。そのドラマを俄然盛り上げるのが悪徳刑事ギョンピル。もう間違いなくゲイリー・オールドマンを参考にしたであろう鬼畜ぶりにユーモラスな言動を加えた凶暴なキャラを体現したソン・セビョクの演技力に脱帽です。
脇を固める演技陣も見事で、ウナの過去を知りウナの逃走に何かがあると勘ぐりながらギョンピルとは別にウナ達を追う国家情報院のミヨンを演じるヨム・ヘランとウナに絶大な信頼を置きながらオフィスの冷蔵庫にあるウナのビールを勝手に飲むペク社長を演じるキム・ウィソンが俄然ドラマを盛り上げます。特にキム・ウィソンの怪演に『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観た人は唸らされること請け合いです。
そして何より美しいのがウナとソウォンの友情。ウナの過去とソウォンの今が共鳴するクライマックスにはもう眼球が飛び出るくらい泣きました。『パラサイト 半地下の家族』で共演したパク・ソダムとチョン・ヒョンジュンの二人の瑞々しさが途方もなく眩しいです。
とはいっても韓流アクションなので流血が夥しくそういうのが苦手な人は要注意。韓流アクションの無双ぶりを体感するにはうってつけの傑作です。