「真昼の情事は殺しの薫り... 愛憎渦巻く養鶏場で誕生した畸形の鶏は思い遣りを無視した利己主義の末路か...」殺しを呼ぶ卵 最長版 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
真昼の情事は殺しの薫り... 愛憎渦巻く養鶏場で誕生した畸形の鶏は思い遣りを無視した利己主義の末路か...
"思わせぶりな演出が続くわりには大して盛り上がらず眠たかった…"といった辛口批評も散見され、確かに頷ける面もあるのですが、当時のスターが出演して商業的成功も企図された作品でも徹頭徹尾、人間のエゴイズムを殊更に露悪的に描く姿勢はアジアやハリウッドの映画とは違った哲学を感じさせます。
そして濃厚な死とエロスの香りに唐突且つ暴力的な劇判が生理的嫌悪感を掻き立てる・・・いわゆるジャーロやユーロクライムの文法で撮られた作風は尖りに尖っており、話の筋よりも情感、起承転結よりも強烈な画造り優先の、雰囲気を嗜む映画です。
一応は因果応報というか、悪だくみをしていた人間はその報いを漏れなく受けたラストですが、兎にも角にも己の愛と道徳に苦しんだ主人公だけがいわば真人間であり、残りのキャラクターは皆一様に自己愛と利潤追求に満ちた人非人で、まさに"正直者が馬鹿を見る"をこれでもかと叩き付けるようなシニカルな印象が濃密でした。
コメントする