劇場公開日 2023年8月11日

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「クロニクル的に変わりゆく主人公の姿に釘付けになる」ソウルに帰る 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クロニクル的に変わりゆく主人公の姿に釘付けになる

2023年8月29日
PCから投稿

不思議な手触りを持つ映画だ。見た目は韓国人のようだが国籍はフランスという主人公のアイデンティティと同じく、本作もまた韓国の地にありながら国境というものを軽やかに超えていく。我々は、外見からその人の出身地や過去を窺い知ることなどできないことを思い知り、と同時に、大切な何かを伝え合う中で言語がいかに憂鬱な壁になりうるのか、その皮肉めいた断絶もまた痛烈にのしかかってくるかのようだ。かつて養子縁組されてフランス人夫婦の娘となったフレディはいまソウルへ降り立ち、限られた時間の中で実の両親を探そうとする。そこにありきたりな感動的再会はなく、彼女の顔に浮かぶ戸惑いと混乱と焦燥が実にリアル。そこから数年単位でクロニクル的に織りなされていく展開、変わりゆくフレディの外面、その内部に渦巻く生々しい感情が我々を惹きつけて離さない。パク・ジミンの颯爽としていて艶かしくミステリアスな存在感に釘付けになる一作である。

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牛津厚信