「袋小路」非常宣言 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
袋小路
心臓が痛い。
作中の「拡大自殺」って単語に戦慄を覚える。
最悪のシチュエーションだった。
飛行機の中のバイオテロ…いや、もう、空飛ぶ棺桶としか言いようがない。
冒頭から耳鳴りのように響くBGM、コイツが一旦止むのが犯人が機内でウイルスを散布し終わった時だった。延々と流れる。意図した事は分かるのだけど、狙いすぎなような気もしなくはなく…その後の束の間の生活音にリアリズムを感じるも、BGMがあるからこそ、あるべきリアリズムが削がれるような気にもなった。
このBGMは作中ほぼほぼ流れ続ける。
韓国2大スターの共演でもあり、1人は機内、1人は地上と、地上の役割何もなくないかと思っていたのだけど…さすがの構成力。納得の配置だった。
いや、むしろ地上の方が能動的であった。
コロナ以降、ウィルスネタは目も引くのだが、この内容を映像化したのは快挙だと思われる。
特に機内がローリングする様は身の毛がよだつ。女性の髪もそうだけど、天井を転がりまわる客室乗務員とか、とてもいい仕事してた。
犯人の人も素晴らしくて…なんか隠世にでもいるかのような、そこに居てもそこに居ない感じがして薄気味悪いったらない。
色々行き過ぎた設定もありはするが、韓国お得意の抉るような人物描写は健在で噛み応えがあった。
各国が着陸を拒否する様は、自分の良心にも訴えかけられもするし、機内の選択にホッともした。
狼狽える乗客たちにも同情はするのだけれど、自分としては、時間がくれば死ぬ状況で、機内にいる以上何も出来ないから返って冷静になったりするんじゃなかろうかとも考える。
この「着陸をしない」って選択が美談とうつる国民性に親和性も感じ…日韓にある慰安婦像とか旭日旗とかの問題も一部の人間が捲し立ててるだけなのかもなと思えた。国民の総意みたいに感じてたけど、そうではないのかも。ただ機長が言う「恨まない」って宣言に、恨(ハン)という文化はあるだなとも感じた。
作品を見て思うのはひき絵の多さだ。
映画らしいと言えばそれまでなのだけれど、この多用されるひき絵にどんな効果を感じてたのか興味が尽きない。感情移入を阻害するとまではいかないのだけど、どこか観察者のような視点を感じる。
日常に依存する視覚とでも言えばいいのか、画面に映る様々な情報の取捨選択が観客に委ねられてるような気にもなる。それが可能なのは俳優陣の没入感が高いって事もあるのだろうなぁ。
BGMの役割は好みなのだとは思う。
緊張感を煽られはするけども、その分、エンタメ色が濃くなる要素もある。
あのBGMがなかったらリアルに寄りすぎたりもするのだろうか…?
気になる点もなくはないけど、よくまとまってたとは思う。最大の疑問は燃料の量だった。
韓国⇄ハワイ間を往復するだけの燃料をそもそも積めるのかとも思うし、後半「ソウルまではもたない」と言ってた割には案外飛べてたように思う。
墜落の危機は、被害の拡大にも直結し、結末をも左右する事柄で…本国の空港上をそこそこ旋回できてた事に興を削がれてた。
ただ、韓国xパニック映画はやっぱ相性がいい。
U-3153さん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
端正な顔のイム・シワンが、少女に執拗に声を掛ける様子は、かなり不気味でした。韓国俳優の層の厚さに改めて驚きました。
悲しい事故が続く韓国ですが、過ちを二度と繰り返したく無いという深い願いをも感じた作品でした。