劇場公開日 2022年12月23日

「犠牲とは、究極なる愛情表現」ほの蒼き瞳 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 犠牲とは、究極なる愛情表現

2025年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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ゴシック・ミステリーは、個人的にも好きなジャンル。「蝋燭の炎の揺らめく薄明かり」「霧が立ち込める怪しい森」「ホーンテッド・マンションの様な洋館」そんな、ゴシック・ミステリーのイメージにピッタリの本作。1800年代初頭のアメリカを舞台にした、ルイス・ベイヤードの原作『陸軍士官学校の死』を、スコット・クーパー監督と名優クリスチャン・ベールが、三度タッグを組んだミステリー・サスペンス。

陸軍士官学校で、首を吊って絞め殺した後に、心臓を抉られて惨殺された士官生の死体が発見される。その事件を穏便に解決して真相を究明しようと、学校サイドは元刑事のランドーを召喚する。そして、捜査を始めた最中に、再び、同じ手口のサイコパスな殺人事件が起き、学校は恐怖の渦に巻き込まれていく。学校サイドも、新たな殺人事件が起こり、なかなか捜査が進展しないランドの言動に不信感を持ち始める。

主人公の元刑事のランドーを演じるのが、クリスチャン・ベール。そして、このサイコパスな殺人事件を、共に解決するのが、何と、後に世界的ミステリー作家となるエドガー・アラン・ポーというシチュエーションが面白い。限られた登場人物ではあったが、その連続殺人事件の裏に潜む切ない家族愛が描かれ、犯人も意外な方向で白日に曝されていく中、壮絶な最初のクライマックスが訪れる。

しかし、本当の真実はその先に潜んでおり、ミステリーとしての大きなサプライズが用意されていた。それは、過去の陸軍士官学校のダンスパーティーの夜に起きた、忌まわしい事件に纏わる復讐劇だった。そして、その謎を見破るのが、誰あろうエドカー・アラン・ポーという設定で、驚愕な二度目のクライマックスへと導かれる。劇中の『犠牲とは、究極なる愛情表現』という言葉の意味が、ラストに来て重みをもつ。

主役のクリスチャン・ベールは、鋭い観察眼で捜査する中にも、どこか哀愁を抱えた元刑事を演じ、安定感のある演技を見せていた。そして、相方となったエドカー・アラン・ポーを演じたのが、『ハリー・ポッター』シリーズで、あの憎たらしいダドリーを演じていたハリー・メリング。ひ弱な風貌ながらも、名推理を繰り広げる士官生となって登場していた。

bunmei21