世界が引き裂かれる時のレビュー・感想・評価
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【”明日、世界が滅びるとしても今日、私は新たなる命を生み出す・・。”2014年に実際に起こった民間機撃墜事件を背景に、ウクライナで生きる選択をした女性の崇高な姿が印象的な作品。】
■2014年当時から、ウクライナでは新ロシア派分離主義者と、反ロシア派が同民族にも関わらず、激しく敵対していた。
今作は、そんなウクライナ、ドネツク州の一軒家に住む身重の妻イルカと、夫トリク、イルカの弟で反ロシア派のヤリクの三人三様の生きようとする姿を、尋常でない緊迫感の中、描き出したヒューマン・ドラマである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭から、イキナリ、イルカと、夫トリクの家に、新ロシア派のロケット弾が誤射され彼らの家の台所の壁に轟音と共に大穴が開くシーンから始まる。
ー その大穴からは、ウクライナの土地が広角で見えている。-
・それまでの安穏な生活は吹き飛び、恐怖と怒りの為かイルカと、夫トリクはいつも不機嫌で険悪な雰囲気が漂う。
・そんな中、マレーシアの民間航空機が”何物かによって”撃墜される。乗客300人近くは死亡。その後、新ロシア派分離主義者たちが、イルカとトリクの家の周りに出没し始める。時折遠方から聞こえる砲弾の音。
ー マレーシアの民間航空機撃墜事件は、その後新ロシア派領域から発射された地対空ミサイルによるものと判明したそうである。-
・トリクは、そんな中、村外脱出をイルカに訴えるが彼女は聞く耳を持たない。又、ヤリクはウクライナ人の誇りを主張すべきと論を張り、トリクと言い争うのである。
ー ウクライナ人の民衆の中でも、意見が分かれる現実を示している。-
■ある日、悲劇が起こる。武装した新ロシア派分離主義者たちがイルカと、夫トリクの家に入り込んできて、飯を作れと言う。
そして、トリクとヤリクは新ロシア派分離主義者たちと外に出て話し合いを始めようとするが、ヤリクが新ロシア派分離主義者のリーダーを撃ち殺したために、二人は命を落とす。
<だが、イルカは独り家に残り大穴の空いた部屋に置いたソファの上で、苦しみながらも自己分娩し、子を産むのである。
そして、エンドロールでウクライナ出身の女性監督マリナ・エル・ゴルバチは”全ての女性に捧ぐ”というテロップを流すのである。
今作は、戦争の愚かさを描くとともに、女性の強さ、逞しさを激しい怒りを交えて、描いた作品でもあるのである。>
<2023年8月6日 刈谷日劇にて鑑賞>
静かすぎるウクライナの平原
家は壊され、牛や鶏は食糧で奪われ、村は封鎖され、男たち(旦那と弟)は殺され、主人公は医者にすら行けず一人で出産するはめに。親ロシア派と反ロシア派に引き裂かれた世界に産み落とされた赤ん坊はどうなってしまうんだろう。
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