世界が引き裂かれる時のレビュー・感想・評価
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ウクライナの苦悩を見事に映像化
これはすごい映画だ。現在続くロシアとウクライナの戦争は、昨年始まったかに見えるがその火種はずっと前からくすぶっていたのだということを描いているという点でも貴重だが、一本の映画としての芸術性が大変に高い。
2014年にドネツク州で起こったマレーシア航空の墜落事件をめぐって新ロシア派と反ロシア派の対立が浮き彫りになる。妊娠中の主人公が住む家はその対立に巻き込まれ家が爆破され、壁に大きな穴が出来てしまう。その穴からは広大で美しい大地が見えるが、点在するのは武装した男たち。このショットの構図が抜群に素晴らしい。広大な空間は開けているように見えるが、精神的にはどこにも行けない閉じられた牢獄である。ここで怯えながら、武装集団に従い生きるのか、それとも脱出するのか、その厳しい選択を迫られる様は、今のウクライナに住んでいる人々のことを思わざるを得ない。
本作はとにかく絵がいい。横にゆっくりと移動する移動撮影で美しい大地に悲劇が横たわる様を見事に映している。撮影監督はさぞ優秀なのだろうと思う。スヴェトスラフ・プラコヴスキーという人だが、国際映画祭で撮影賞を受賞しているようだ。この人の撮影した映画をもっと見てみたい。
報道されない、些細なできごと
まず注目してほしいのは風景。この映画のどこまでが、事実か分かりませんが、世界有数の穀倉地帯が、戦禍に晒されているのは事実でしょう。しかも此処に、クラスター爆弾、落とす気でいる輩もいるとか。大量にばら撒かれる小型爆弾は、どうしても不発弾を含むそうです。結果、一発でも投下すると、ヒトが容易に近づけない場所になるそうです。
先程、買い物したら、小麦を原料としたお菓子が、ひとつ残らず値上げ。この先、どうなると思います?。この値上げ、誰のせい?。
ユーゴスラビアという国がありました。多民族、多宗教のヒト達が家庭を築き、仲良く暮らしました。ある日、連邦制は解体されました。すると、家族同士、お隣さん同士、銃を向け合うようになりました。その後どうなったかは、「最愛の大地」「アイダよ、何処へ」「神々と男たち」で、ご確認下さい。
私が映画ひとつ観たところで、世界は何も変わらない。でも多くの人に知ってほしい。映画というエンタメ産業が残した記憶。その記憶の先に、今よりマシな未来を渇望した人達がいたこと。裏腹に、どうしよう無い現実と向き合うしかない人達も、いること。
私がこの映画の主人公だったら、カメラ目線で叫びそう。
プー◯ンのク◯野郎を、ミサイルでFU◯Kしてやる!。
私達は、進化していると思いますか?。
未来は、産声をあげたばかりです。
今にも壊われてしまいそうな未来を、抱きしめるは誰?。
未来を生きる皆様に、この映画を捧げたく存じます。
ウクライナ戦争は根が深い。
舞台となったドンバス地方ドネツク州グラポペ村は、まるで北海道とか阿蘇の広大な原野で、田舎ののどかな村だ。ちょっとしか人は暮らしてない。そんな村の農家の人々にまで、銃を突きつけて「敵が味方か」「ウクライナ派か親ロシア派か」を問い、惨殺する。
これが戦争。恐ろしいという言葉では片付けられない。不勉強な僕は、今回のウクライナ戦争の根っこが1954年から始まっていたなんて知らなかったです。
舞台となった村の広大さがかえってこの惨劇を浮かび上がらせる構造。
結局何処へも行けない
戦争はつい最近の話だと思っていたのですが、2014年だから以前からロシアとウクライナ燻っていたのですね
弟はどうやってキーウから来てるんだ?旦那との不仲にはウンザリ イルカさんも喚いてばかりで人使い荒いわで、見ていてイライラしてしまった
おそらく銃を携えた兵がウロウロや不便な生活、今でも続いてるであろう現実を伝えているのだと思った
異臭
2014年7月、ウクライナはドネツク州で暮らす妊娠と夫が紛争に巻き込まれて行く話。
親ロシアの分離主義勢力による大砲の誤射により家の壁が崩れ落ちる中、夫の友人に車を奪取され…。
TVで情報は掴めているのに戦争が始まっていることを受け入れられない、受け入れたくない妻。
そんな危機感の無いイルカと、煮えきらない夫トリク。
そして猪突猛進お話しにならないキーウから戻ったイルカの弟ヤリク。
そんな3人が不穏さを増していく村でいよいよ追い詰められて行く物語で、恐ろしさや悲しさややり切れなさ、そして力強さもあるにはあったけれど、イルカが本質を見ようともせず夫に当たったりゴネたりと、ある意味能天気な様にも見えてしまい、せっかくのラストもそれ程には響かなかった。
マレーシア航空機墜落事件を背景に翻弄される主人公の姿が痛ましい重量級のドラマ
舞台は2014年、ドネツク地方にある小さな村の外れにある民家に暮らしている身重の妻イルカと夫のトリクは深夜の爆音と衝撃で目覚めると自宅の壁が崩れ落ちていた。分離主義者による爆撃かと思われたが自宅に落ちてきたのは爆弾ではなく、自宅から遠く離れたところで発見されたのは航空機の残骸だった。
マレーシア航空機墜落事件の現場となった村を舞台にしたドラマですが、そこで描かれている世界は今連日テレビで観ているものと同じもの。しかし突然訪れた航空機が落ちてきた村では何が何だか解らない。巨大な残骸に群がるように軍や警察が押し寄せる。遺体や遺品を求めてやってくる外国人達とは言葉も通じない。そもそも航空機はなぜ墜落したのか。操縦ミスか撃墜されたのか。何ら正確なことが判らない中で翻弄されながらも毅然と振る舞うイルカの元に突然訪れる終幕は微かな希望が絶望の中にかろうじて浮かんで見えて壮絶なまでに痛ましいです。
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