「内戦に苦しむ瓦礫の街の現実を、壁のない家のお茶の間から描き出す。」ヌズーフ 魂、水、人々の移動 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
内戦に苦しむ瓦礫の街の現実を、壁のない家のお茶の間から描き出す。
第35回東京国際映画祭ユース部門で上映されたシリア映画。戦争で瓦礫と化した街。爆弾で壁や天井に穴が相手もなお、自分たちの家に住み続けると言い張る強権的な父親と、外の世界に思いを馳せる娘や妻のファミリードラマ。シュールな設定と切実なテーマ、ユーモアと皮肉とエンタメ感が融合していて、ついイランのモフセン・マフマルバフやジャファル・パナヒらを想起してしまった。ラストは現実の重さに比して甘いと思う人もいる気がするのだが、家族という摩訶不思議な交わりの落とし所として納得したし、映画として希望を捨てたくないという主張でもあり、また作品としての愛らしさにも繋がっていると思う。映画祭で観られたことに感謝しつつ、もっと幅広く鑑賞されてほしい間口の広い魅力があるので、どうか一般公開までたどり着いてくれないか。このまま埋もれるのはあまりにももったいない。
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