劇場公開日 2024年7月6日

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「実直に生きる職人、安住の地より信念の先へ」アイアム・ア・コメディアン サスペンス西島さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0実直に生きる職人、安住の地より信念の先へ

2024年8月1日
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鑑賞方法:映画館

2024年劇場鑑賞60本目 名作 85点

2024年劇場鑑賞108本中3位の作品

少し前に公開された東出昌大を追ったドキュメンタリー映画"WILL"と甲乙付け難い、一個人の生き様そのものが怒涛のドラマになってしまう今作は、わたしみたいな彼の存在は知っているが、詳しくは無くて、勝手な世間のイメージでなんとなく認識し、特別興味もない様なありふれた国民が観るからこそ、無関心が関心に変わり、興味から好意にすら変わる、それほどの力が彼とこの映画には確かにある

安住の地に居座ることなく、信念を突き通し挑戦し続ける、声明し続ける彼の勇姿が、突出した存在になってしまう日本の国民性と沈黙が金とされる文化に一石を投じる、そんな作品である

ウーマンラッシュアワーというお笑いコンビが、それなりに親しい上で、お互いを引き出し合う、"魅せる"為に利用し合っているような関係が、奔放な相方を思いやる愛を含め商売道具だと割り切っているような淡白さが、業界で生き抜く上と、そこをはみ出る上で良い関係を築けている様に見えて、関係者やお客さん全ての人への尊敬の念と対価を払う、真剣そのものを感じた

みんな口を揃えて、日本のジョーカーと呼ぶがほんとまさしくで、ジョーカーもなるべくしてジョーカーになってしまうのが、その他大勢が静寂が正義が故だから、もっと一人一人がうちに秘めるだけでなく、世界に関心興味をもち参加することから始めないと、いつまでも名ばかりの民主主義で、資本主義は終わらない

幕が降り拍手喝采の中一人立ち尽くすシーンや、雑居ビルの地下で暗闇の中一人腰を落とすシーン、予告にもある韓国人が今まで見てきたお笑い芸人で1番新鮮という言葉に、対して日本に馴染みがある異国の人という渦中の外の人にとっても、そう認識されてしまう、色物扱いという悪意の無い貴重な声に、驚きと虚無が入り混じるかの様に彼も新鮮とぼやく

そういったそのシーン一つ一つの前にそれぞれ前兆があって、その上での上記の様なシーンの台詞の行間や沈黙が、彼への共感と監督が我々に何を見せたい伝えたいのかが手に取るようにわかる

彼自身を知る両親や旧友、相方しかり、彼の人物像を浮き彫りにしていく過程で、きっと心なしに人を傷つけた時期や、無鉄砲に自我を主張・押し売りをしていた時期があったんでしょう

恵まれなかった部分も恵まれていた部分もあるが、さぞ愛されていい子だっただろうし、次第に人の痛みに気づいたり、人様に迷惑もかけ幸福を分け与える、そんな立場になるにつれて、言動に対しての対価を惜しむことなく還す心を備え、これからも止まることなく走り続ける彼を応援したい

是非

サスペンス西島