劇場公開日 2024年7月6日

「村本大輔という「ジョーカー」」アイアム・ア・コメディアン luna33さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5村本大輔という「ジョーカー」

2024年7月18日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

正直に言うと、僕は村本大輔という男が決して好きなわけではない。

彼のコメントなどは芯を食ってるようで少しズレているように思えたり、言ってる事がブレているように感じられたりしていまいち共感出来なかったのだ。ただ本作がなぜこんなにも評価が高いのか?それをどうしても知りたくなり、とにかくこの目で確認してみようと思ったわけだ。そして観終わった時、彼に関する色んな「謎」が解けたような気がした。

お笑いやパンデミックなど彼を取り巻く環境だけでなく、家族や友人など周囲の人達との関係性を知り、またそこで交わされる会話などから「村本大輔」という一人のコメディアンの人間性が少しずつ浮き彫りになって行く。

スタンダップコメディへの拘り、緊急事態による活動停止、アメリカでの修行、両親とのエピソード、学生時代の友人との再会、それらに耳を傾けるうちに村本大輔はなぜ「村本大輔」という男へと仕上がって行ったのかがリアルに伝わってくる。その様はさながら映画「ジョーカー」を体現しているかのようにも思えた。実際ラスト近くで村本が本当にジョーカーのように体をくねらせて踊るシーンもあり、この辺りを含めた全体の「構成」は見事としか言いようがない。

母親から「人を嫌な気持ちにさせる」と言われる。父親から「やってる事が違う」と言われる。旧友からも「変わった奴だった」と笑いながら言われる。若い頃も大してサッカーやってないのに「ブラジルへ行く」と言い出してみたり。そう、つまり彼は明らかに昔から「変な奴」であり、その「本質」は基本的に変わってないのだ。それでも自分を信じ続け、貫き続け、動き続けた。そして男はいつしか「ジョーカー」へと変貌していったのである。

彼には揺るぎない信念がある。実際にどこへでも行き、あらゆる人に会い、貪欲に意見を交わす。正しいかどうかではない。まず「人と目を合わせること」が重要なのだ。だから相手が敵だったとしても、噛み合わなかったとしても「向き合えたこと」を素直に喜ぶ。そこには卑屈さから生まれる凄まじいエネルギーがあり、圧倒的な行動力が彼特有の説得力を生み、その場の空気を支配していく。そんな「ジョーカー」はエンタメを通じてこれから本当に何かを変える男になるのかも知れない。

自分とは違う方向性だったとしても、己を信じて貫いてる人はやはり美しい。
僕は今でも彼の意見に賛同出来ない事も多いし、きっとこれからも彼を好きにはならないと思う。でもその一方で「村本大輔」という男の存在や生き方を、これ以上ないほど「全肯定」したいと強く思う。

luna33
shinさんのコメント
2024年10月13日

コメントありがとうございます。共感して頂いて嬉しいです。人の心を揺さぶるドキュメンタリーでしたね。

shin
ゆきさんのコメント
2024年8月25日

こんにちは。
本当に熱い!良い作品でしたね!
レビュー全てに大共感です!
映画の感動が蘇りました。ありがとうございます٩( ᐛ )و

ゆき
sow_miyaさんのコメント
2024年7月27日

コメントとフォローありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
本当にいいドキュメンタリーでしたね。

sow_miya