劇場公開日 2024年1月12日

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「死者との旅」葬送のカーネーション 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0死者との旅

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

荒涼とした大地を、棺を抱えながら歩く老人と少女の姿を、非常に少ない台詞と美しいショットの連続で描いた作品。全編の抒情的な雰囲気が素晴らしくて大変にセンスの良い作品だ。二人がどこに向かっているのかは終盤までわからない。棺の中は男の妻の遺体。ことはわかる。死者との旅という点でトミー・リー・ジョーンズが監督・主演した傑作「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」なんかを思い出す。
死者との旅は生きる意味を問い直す旅となっている。道中、色々な人に助けられながら進んでいく二人は、様々な生活をしている人たちと束の間の時間を共有する。人の営みと無言の遺体。この映画の二人はそのどちらともコミュニケーションしているのだと思う。
途中、幻想のシーンも挿入されるためか、全体的に寓話的な雰囲気も漂う。遺体を担いでシリアの紛争地帯を目指す親子、世界は争いに満ちていて、人が理不尽に死ぬ悲劇に溢れている。国境は生と死の境界線か。しかし、この映画は生と死の境界線が曖昧な雰囲気が漂う。それは悪い意味ではなく、生きる者は死者とともにいるのだということでもあると思う。

杉本穂高