「心温まる家族のルーツ探しと歴史から消えかけた戦後混乱期の記録」Yokosuka 1953 シマウマさんの映画レビュー(感想・評価)
心温まる家族のルーツ探しと歴史から消えかけた戦後混乱期の記録
5歳で単身横須賀からアメリカへ渡ったバーバラさんの66年ぶりの帰国の物語。きっかけは娘のSNSという現代らしいエピソードの一方で、生き別れた実母を知っている世代がギリギリ存命しており、かつコロナ前だったという今から思えば奇跡的なタイミングに撮影されたドキュメンタリー。もしも2022年の今から始めたなら、もう同じものを作ることはできなかっただろう。3年前の映像にしていきなり歴史的な価値が高まっている。
戦争が遺した爪痕は男の物語として語られやすい一方で、被害を受けるのはいつも子供や女性という社会的に弱い存在なのだということを、大学教授でもある監督が風化しかけた歴史を丁寧に紐解きながら改めて突き付けてくれる。一方で作品はバーバラさんの常に前向きな姿勢に救われ、雰囲気が重苦しくなり過ぎないのが凄い。
偶然から始まるバーバラさんの故郷を巡る旅で生まれた、まるで必然かのように思える奇跡的な出会いの数々に、後半は涙が止まらなかった。ハンカチ持参で観に行くことをオススメします。
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