「前半はスリラー。後半は対比になるようなドラマ」理想郷 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
前半はスリラー。後半は対比になるようなドラマ
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前半は隣人の兄弟とのいざこざに恐怖するスリラーのような雰囲気。アントワーヌは兄弟に対抗すべく争いを激化させていく。
互いに自分の主張を押し通すために「力」を行使する。どちらが勝つのかしか存在しない、まさに対立。
考え方の違いから歩み寄ることは不可能なようにも見えた。
兄弟の兄が言った。風車のために提示された金額を見るまで自分が惨めだと知らなかったというセリフはとても印象的。
後半になると、視点キャラクターである主人公はアントワーヌの妻のオルガに移る。
相変わらず兄弟による恐怖は残っているものの、内容はスリラーからヒューマンドラマへと変化していく。
どうやって生きるのかといったような話だ。
ある意味で前半もその話をしていたとも言えるわけだが、男たちは争い、どちらかしか生き残れないような選択をした。
一方でオルガは、共存の道を探ろうとした。
ラスト、兄弟の母親に対し、自分は丘の上の家にいるからいつでも来てというシーンは実に興味深い対比の場面で、全くハッピーエンディングではなくとも、温かさを感じさせる。
前半の殺伐とした緊張感あふれるスリラーパートが嘘のようだ。
実話から着想を得ているらしい本作。
どれくらい事実に即しているのか分からないけれど、自分個人としては、村の方向性に反対しているアントワーヌの方が印象が悪い。
確かに兄弟はやりすぎたけれど、郷に入っては郷に従えに反しているアントワーヌは強情すぎたように見えた。
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