1976のレビュー・感想・評価
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日常生活に静かな恐怖が宿るピノチェト政権下のチリを描いた重いドラマ
主婦のカルメンは懇意にしている司祭から負傷した青年の看護を頼まれる。甲斐甲斐しく世話をするカルメンだったが、青年からある依頼を引き受けたことから穏やかだった生活に暗い影が落ちることになる。
ピノチェト独裁政権下での圧政を直接的に描くのではなく、日常生活の中にちらちら見え隠れする何気ない会話に滲む圧力や市民の物憂気な表情などで当時の張り詰めた空気感を表現する作品。凄惨な描写は欠片もなく、カルメンが意を決して行う行動も傍目にはちょっとした遠出程度のものですが背筋が凍るような恐怖を湛えています。静かに訪れる終幕にも鉛のような重さが宿っていますが、この恐怖と同根のものは我々の日常生活の中にも潜んでいるもの。ほぼ半世紀前の他国の歴史が全く他人事に思えないことに戦慄させられます。
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