「「綺麗に死ね」」銀河鉄道の父 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
「綺麗に死ね」
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不安定ながら、父目線のため心情の説明がされない賢治を菅田将暉が(たまにあばれる君に見えるくらい)好演。
役所広司も硬軟織り交ぜた名演で全体を支えるが、そんな中で本作の鍵となるのはやはりトシを演じた森七菜。
父の説得から病床の姿まで、素朴ながら芯のある姿は彼女ならではの奥行きが感じられた。
また、本人のみならず賢治が死に取り乱さなかったことも、「綺麗に死ね」の言葉があってこそ。
登場シーンが劇中で最も画面が明るかったことが象徴するように、宮澤家を照らす存在でした。
ただ、話が断片的な上に“間”を取らずカットが切り替わることが、切り貼り感に繋がっていて残念。
子供がカメラをガン見していた祖父の葬列シーンは撮り直しもカットもせず、画的には素敵だが話的には完全に不要なチェロのシーンは入れる。
わざとらしいスロー演出なども含め、引き算ができずに各シーンの余韻が殺された印象です。
母親が「最後くらい」と清拭をする場面も、それまでの“添え物感”が強すぎて、今さら我を出されてもと感じてしまった。
タイトルも惹句としては素晴らしいが、内容的には『銀河鉄道の夜』を引くには違和感があります。
しかしながら、政次郎が『雨ニモマケズ』を暗唱し慟哭するシーンでは涙腺が緩んだ。
「質屋を継げ」に対する反応で賢治の変化を、ランプの火の調整(賢治は小から大、政次郎は大から小)で二人の違いを出すのも上手い。
惜しい点はありましたが、演技も画作りも十分に良かったです。
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