劇場公開日 2023年1月20日

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「会議進行の教科書。しかし...」ヒトラーのための虐殺会議 山本龍彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0会議進行の教科書。しかし...

2024年10月28日
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鑑賞方法:その他

怖い

知的

難しい

かの悪名高いホロコーストの方向性を決定付けたヴァンゼー会議を映画化した本作品。
映画丸々会議シーンという刺さる人には刺さる構成。

内務省、法務省、外務省、ナチ党官房、総督府そして作戦の実行者である親衛隊の官僚たちが集い、お役所にありがちな縄張り争いや負担の押し付け合いを交えつつ、極めて理性的に「ユダヤ人問題の最終的解決」のための計画を話し合う。

会議の中身はえげつないの一言に尽きるが、美しい湖畔のほとりの別荘で、音楽もなしに淡々と会議が進む様は謎の美しさすら漂う。

具体的なプランを用意して臨むホストの親衛隊、それぞれの立場や状況からさまざまな意見を出す官僚たち。席次を気にし、ブレイクタイムを用意し、反対派の人物には個別に諭す。
会議の議題に関して言えば、許されるべきものではないが、壮大なプロジェクトを前にして、それをいかに実行に移すかを真面目に議論する官僚たちの姿は社会人にとって、どこか胸が熱くなる瞬間があるのではないだろうか。

それでも「ユダヤ人問題の最終的解決こそが正義である」という命題に誰ひとり疑問を持たない空間には、人種ヘイトを行動規範とするナチズムの恐ろしさを否が応でも感じさせられる。そして、「仕事だから」と私たちもこうなる可能性が常にあることに背筋が凍る思いがする。

淡々と進む映画だが、あまりにも重い、考えさせられる2時間。個人的にオススメの一作である。
唯一不満点を挙げるとすれば、親衛隊のラインハルト=ハイドリヒを演じる役者が史実のハイドリヒにあまり似てないこと...くらい。

山本龍彦