「ハンナ・アーレントは、「ヒトラーやヒムラーからの命令を実行しただけ...」ヒトラーのための虐殺会議 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
ハンナ・アーレントは、「ヒトラーやヒムラーからの命令を実行しただけ...
ハンナ・アーレントは、「ヒトラーやヒムラーからの命令を実行しただけ」と繰り返すアイヒマンを「全体主義」「凡庸な悪」「思考停止」と言った。確かに無知の穴は、今日もいたるところに開いている。だが、本作を観るとその表現だけでは少し物足りない。
アウシュビッツでは、ナチスによって「ユダヤ人」が虐殺された以上のことが、ユダヤ人であるというだけで殺された「個人」に対して行なわれていた。歴史がそれを「ユダヤ人の虐殺」としてしか扱わないのなら、人々の記憶が忘却された頃、また人類はナチスと同じところに行き着くかもしれない。
あらゆる抑圧の犠牲者たちの無数の幽霊の前で、我々はその痕跡をかき集めるしかない。焼き尽くされたユダヤ人の「個人」。その痕跡や灰、声なき記憶を忘却してしまう世界なら、どんな正義も、どんな法律も在りえないということだ。
もしも私がタイムスリップして、この日のこの会議の16人目の参加者になったらどうするだろう、と想像しながら鑑賞していた。
〝十二人の怒れる男〟みたいに、最初は私一人が異を唱えるが徐々に賛同者が増える…なんてことは絶対無理だろう。「なんだお前!」って言われて銃殺されておしまいだよね。
それでも黙ってるわけにはいかないじゃん!!
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talismanさんのコメント
2024年10月17日
アイヒマン=凡庸な悪、私もこの映画を見ると納得できませんでした。彼は有能で、自負しといたし上司からも認められた。「凡庸」という言葉を使ったアーレント(すみません、この映画見てません)のインテリの高慢と嫌らしさを感じる。