劇場公開日 2022年12月16日

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「明るく刹那に生きるティーン女子が背負っているもの。」Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5明るく刹那に生きるティーン女子が背負っているもの。

2022年12月31日
PCから投稿

バカなティーンがバカげたことをしでかす青春ムービーで、能天気な『スプリング・ブレイカーズ』と言えば伝わる人もいるだろうか。主人公の二人の女子は、刹那で享楽的で、どうしようもないんだけど突き抜けた明るさがあって、劇中に登場するある大人と同様に「どうかいつまでもそのままでいてくれ!」と祈りにも似た思いで見守ってしまう。

しかし能天気の空気感は、裏返せばホワイトトラッシュの劣悪な境遇を浮かび上がらせる装置でもある。ノリだけで生きてるような二人だが、なぜ16歳で大人の干渉から逃れ、家賃を払い、ダイナーで(多少不真面目だが)働き、ハッパやドラッグやパーティーに興じながら暮らしているのか。彼女たちの境遇や生い立ちが楽であったわけがなく、だからこそ彼女たちが屈託なくバカをやっていることが尊くすら感じられるのだ。

軽い青春コメディとして楽しむもよし、刹那の切なさを感じるもよし、社会派の一面に注目するもよし(いや、さすがにこれは簡単じゃないと思うが)。主人公の二人と同様、バカっぽい外見よりも遥かに奥行きのある映画であることは間違いがない。

村山章