劇場公開日 2025年1月31日

「初版から50年経っても作られる意味とは?」ベルサイユのばら asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5初版から50年経っても作られる意味とは?

2025年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

 「映画は生ものである」と自分は考える部分があります。どんなけ素晴らしい映画でも、その時代のトレンドを外せば客は来ず赤字になってしまうため、製作し利益を得るには今のトレンドを把握する必要があると思うのです。
 そして今回、昭和時代に流行し、アニメや宝塚歌劇でも有名になった少女漫画が原作の「ベルサイユのばら」が、リメイクとして令和のスクリーンに帰ってきた。

 今の時代に、なにか通ずるものがあるのでは?

 そういった興味で本作を鑑賞しました。自分にとって初のベルばら体験です。

 まず思うことは、本作はミュージックビデオ調な演出がちりばめられていること。とはいえミュージカルチックな仕上がりでもあり、これは宝塚を意識してか。自分としてはドラマ的にキャラクターを掘り下げていってほしかったところではあったが。

 だが、そもそも持ってる主要なキャラクターたちの直情的な激しさと信念の強さが、掘り下げなくても観てる自分には強く伝わってくるんです。時代は革命より少し前のフランスを舞台に、己の心のままに動くマリー・アントワネットと、自分が正しいと思う方向に進む力を持つオスカル、果たせぬ恋と知りながらも、最後まで相手を想うアンドレとハンス。各々の置かれた身分から周りを気にして自分を抑圧するのではなく、一人の人間として修飾されない言葉と思いをぶつけて行動する姿は、逆にかっこいいと素直に感じてしまった。

 また、“人は生まれながらにして自由”というオスカルの発言も力強い。元々はフランス革命の時に発せられた言葉だ(まあ本作もフランス革命が絡んでいるのだが)。本作の彼らは、地位や身分、育ちによって考え方自体も縛りが生じている。だが本来はそうではない。みな平等に自由なのだから、どんな思いや考えをもっても良いはずで、それを奪われるようなことは決してない。しがらみや関係を気にするのではなく、もちろん相手の考え・思想を理解したうえで

自分らしく生きることこそが大事と、本作は改めて世に訴えているのではないか。

 激動の時代に、自分らしさを貫き通す強さと潔さ。これは、いつの時代にも熱く響くテーマだと思う。そして、それを困難な立ち位置にいながら熱く燃やす彼女たちを観て、カッコよくて美しいと感じたんです。

 これは、自分にとって不朽の作品と感じました。

asukari-y