「ジャンル通りの内容でSF」メイクアガール ソケットさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャンル通りの内容でSF
驚くほどサイコスリラーだった。
主人公の馴染めない性格設定も恋愛に至る唐突さも全てが母親の掌の上での事であると言う結末は中々に恐怖を感じた。
恐らくは主人公が研究者を目指した事も研究内容がチグハグであった事も0号を作った事も母親に仕組まれたプログラムである。何故ならそれが全て物語上上手く噛み合いすぎていたからである。
なので主人公は最初から最後までプログラム通りに動くロボットでしかなかったという訳だ。
実際、最終的に母親の復活まで果たしているからである。
対して0号はイレギュラーで家族ではなく彼女として作られた結果、自らの恋と心は作り物ではないかと疑問を持ち始める。
それ故に最期に自らの恋と心の存在を証明する為に主人公の殺害を実行するのだが、一歩及ばずに果ててしまうことになる。
そして物語ラストで起き上がった0号は恐らく母親のデータがインストールされた状態である。
その根拠はエンドロール時のファミレスバイトで0号が軽々こなせるようになった業務全てを失敗している描写である。人は経験のない事や苦手な事に関しては最初から上手く出来ないからである、例えそれが「怪物」と呼ばれる天才であっても。
はっきり言ってバッドエンドなのだが、0号はそのプログラムから解放される最期に人間になり得たと思う。結果として敗れたが創造主に対しての反抗を実行し、自らの存在証明を立てたからである。
そう考えなければあまりにも0号が可哀想で浮かばれないからだ。
考察しがいがあり、絵的にも文句のない本作だが星一つ下げた理由は上記の内容に対する描写が薄すぎる事である。
ちゃんと見ていていないとこの辺りの話を理解する事が出来ずに物語自体が滅茶苦茶にしか見えないからだ。
この作品の評価が下がっているのも恐らく理解してもらえて居ないからだと思う。
2027年にも新たな挑戦をする予定のようだが、それも期待して待ちたいと思う。