終末の探偵のレビュー・感想・評価
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町田市かな
とある中国人が多く暮らす街で私立探偵、連城新次郎(北村有起哉)は、ヤクザ笠原組幹部の恭一から事務所に放火した犯人捜しを頼まれる、一方、事務所兼喫茶店に来たフィリピンパブの女給ガルシア・ミチコ(武イリヤ)から行方不明のトルコ人の友人ベリラ探しを頼まれる。
笠原組と中国系マフィアの争いに巻き込まれるし、高校生にボウガンで撃たれたりと散々な目に合うがなんとか囚われていたベリラを見つけミチコのもとに連れ返すがベリラは住民の密告で不法移民として当局に捕まったらしい・・。
ヤクザや移民問題、外国人差別など現代の社会問題を反映した社会派探偵ドラマ。
舞台はどうやら町田らしい、風紀の悪い、いかがわしい歓楽街、近年取り締まりが厳しくなった歌舞伎町から追い出されたヤクザが集まるような街となっているし、1992年と2007年にも暴力団員が一般市民を人質にした立てこもり事件が起き、2023年にも喫茶店で山口組幹部が撃たれる事件がおきている。それだけ暴力団関係者との因縁深い土地、一方、町田市には外国籍住民が多く、外国籍住民約9,465人のうち、中国籍の住民が3,192人(2023年)と最も多いとされていますから、映画は、ある意味ドキュメンタリー的側面も秘めていたのですね。
本当の黒幕は現代日本に巣くう排外主義という名の病魔。
俳優北村有起哉がはまり役で魅せる痛快探偵もの。私もこのシリーズ化には大賛成。
ストーリー自体は街を牛耳る二大勢力を互いに争わせて自滅に追いやり、そのすきに利権を独り占めしようと企む黒幕の存在という、過去に散々やりつくされたようなネタ。しかし、それに現代日本における排外主義という闇を加えた辺りがタイムリーでなかなか見ごたえがあった。
主人公の探偵連城は社会からはみ出した人間、そして依頼者のミチコは日本から受け入れてもらえない人間。
その主人公たちが必死で探し出した囚われのクルド人女性、しかしやっと助け出したのも束の間、彼女は入管に収容されてしまう。
散々都合よく利用して最後はごみのように捨てられる外国人たち。この結末が今の日本社会の非情な現状を浮き彫りにしている。
自分の心は日本人だとかつて述べていた日本育ちの少女に日本なんて大嫌いと言わせてしまう今の日本の現状。弱者をいたわる余裕さえ持てなくなった日本の現状がここにはある。
気になった点はあの排外主義者の学生がボウガンで組関係者を襲う点。単独でやるにはリスクが高すぎる。黒幕の実業家がDHCの会長みたいな人物で裏で彼らを操っていたとすればつじつまが合うのだが、編集でカットされたのかな。
もちろん大好物
60年代生まれのおいらの世代、「傷だらけの天使」に「探偵物語」「プロハンター」、探偵ものはもちろん大好物。密かに楽しみにしていた本作。だからこそちょっと辛口にもなる。一匹狼のしがない探偵、家賃も払えてないが腕っぷしはめちゃめちゃ強く、仲がいいヤクザの幹部もいたりして、スジ的にも一本の映画というより連ドラか漫画のワンストーリーのムード。どことなく関川夏央谷口ジローの「事件屋稼業」。サイドストーリーのクルド人問題は「マイスモールランド」見てないと難しかったかも。
北村有起哉の探偵は格好いいし強いんだが、ラスト近くの殴り込みはとにかく敵が弱すぎるし、ショッカーばりにやられた奴らは床で這いつくばるばかりで現実味が無くマイナスポイントに。謎の敵とのチェイスシーンもあれ?と思わされるトコも。
エンディングのラーメン屋で外の争いに巻き込まれて行くところはかなり好みのシークエンス。
繰り返しになるが、何本かのシリーズにすることで、この一本もより価値が出てくると思う。
シネマート新宿で、思いがけず井川監督と助演男優たちの舞台挨拶を見ることができた。ヤクザの幹部松角洋平とその子分たち佐藤五郎と茨城ヲデルはキャラが立っていてその面でも連作を見てみたい。監督もみなさんも、引き続き頑張ってください。
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