劇場公開日 2022年12月16日

  • 予告編を見る

「シリーズ化希望、懐かしいけど新味のあるボヤキ探偵。」終末の探偵 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シリーズ化希望、懐かしいけど新味のあるボヤキ探偵。

2022年12月31日
PCから投稿

良くも悪くもどんくささやダサさがある映画だとは思う。悪くも、の部分で言えば、探偵ものというフォーマットを批評的に捉えることなく、ベタな雛形に収まってしまっていることで、良くもの部分を言えば、そういうベタさが時代から消えていく寂寥を作品のテーマにも含んでいること。ダサくて何が悪い、俺たちはここでギリギリまで踏みとどまるんだよとでも言いたげな作りての居直りが、さまざまな弱者へのシンパシーを打ち出した物語ともちゃんとリンクしているのだ。

そして、映画をただの懐古趣味に貶していないのが、北村有起哉が演じてる探偵の佇まい。すべてにウンザリしているようでいて、なにかを諦めてはいない。そして突発的に、狂気にも似た暴走を見せるので目が離せない。ダルそうな探偵というジャンルの定番を踏襲しながらも、奇妙な新味のあるキャラクターを創出している。シリーズ化されて、この規模感でいいので年に一本くらい新作を観てみたい。できれば特に本人の過去とかは掘り下げなくてよくて、とにかく時代のエアポケットで漂っていてほしいキャラである。

村山章