「見事な主観ショット」劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
見事な主観ショット
本編の主人公は日向だが、この映画に関しては主人公をライバルの研磨に設定しているのが良い。研磨が自分のバレーボール好きを自覚するまでの物語として、観客はこの映画を体験することになる。最初からバレー大好きな日向ではなく、バレーの面白さに気が付く研磨の気持ちに観客を同一化させることで、原作者が一番伝えたいこと「バレーボールは楽しい」を最大限に表現してみせた。
終盤の主観ショットが、それを一番端的に表現している。あの長いラリーをコート上で必死になってボールの行方を追いかける様を研磨の主観でワンショットで見せてしまうのはしびれた。あんなに効果的な主観ショットはなかなかお目にかかれない。しかも、その主観を保ったまま過去の練習風景に突入してしまうのもすごい。主観は主観的であって、客観ではないから、どう見えて、どう感じているかはその人にしかわからないのだけど、彼の脳内で今と過去の思い出がないまぜになって体験されている。それを映像で見せてしまえるのがすごい。実写で同じことをしても、あんなにシームレスに感じさせるのは難しい気がする。実写的な3Dレイアウトを使ってアニメを作るとああいう表現ができるのかと感動した。
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