「まほろばは心の中に」MAHOROBA レントさんの映画レビュー(感想・評価)
まほろばは心の中に
いま「無名の人生」が絶賛公開中の鈴木監督のアニメーション作品。朝にサクッと見れるほどの短編映画なのでほんと重宝する。
製作時期から考えてもコロナ禍なのでその時期から思い起こされるような当時の抑圧された社会の雰囲気が読み取れる。
ブラック企業に勤めているという設定もそんな主人公の抑圧された心理を端的に描いている。
でもみんなが仕事してる中で一人ゲームしてりゃあ社長から往復びんたくらわされても文句言えないよね、そんなことないか。でも救援にちゃんと駆けつけてくれるほど実は主人公を一番思ってくれてる人でもあった。
最も憎むべき社長がこの世界で唯一自分を愛してくれてるという矛盾。この社長は監督の持つ父親像なのかな。子どもにとって父親は人生で越えなければならない相手でもあり愛する存在でもあるという相反する存在だったりする。
父親から厳しくされた監督を思う存分甘えさせてくれた祖母の存在。おばあちゃん子だった監督の思いが本作に込められているんだろう。
自分が生きる世界から逃避してたどり着いたのが無人島で、主人公は厳しいサバイバルを強いられ、ようやく救助されても世界は恐ろしいウィルスが蔓延。再びそこから逃避する。今度こそ自分の求めていたまほろばにたどり着けた。でもそれははかない夢でしかなかった。
人が生きている限り追い求め続けるまほろばは自分の心の中にしかなく、それは現実には決してたどり着けないものなのだろうか。人はそれを追い求め続けていずれ人生は終わりを迎える。
なんで突然ビートたけし?北野監督へのリスペクト?なんで突然トンプソンズ?
後半の追い求めた愛するものと家庭を築いた当たりの描写はすごく良かった。
無名の人生はもう少し拡大公開してくれないかな。少しアクセス悪くて見に行くか悩んでる。