「謎と暴力に塗れたデジャヴの映像が彼女を思考のラビリンスへと誘う... 記憶喪失の主人公を見舞うサスペンス、スリラー、そしてラブストーリーの万華鏡映画」君だけが知らない O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
謎と暴力に塗れたデジャヴの映像が彼女を思考のラビリンスへと誘う... 記憶喪失の主人公を見舞うサスペンス、スリラー、そしてラブストーリーの万華鏡映画
事故で記憶を失ってしまった女性が夫の献身的なサポートを受けて日常生活を取り戻し始めるも、行く先々でデジャヴを目撃しながらそれが血腥い光景へと発展し、夫も自分自身すらも信じられなくなっていく…というサスペンス志向の作品です。
・・・なのですが、そこから中盤は主人公が自らの命の危機に瀕するスリラーの様相を呈し、ラストはなんと至上の愛を鬻ぐラブストーリーへと帰結します。
個人的にはスリラーまでで留めておいてほしかった気もするのですが、そこは好みそれぞれということで、少しずつ真相を紐解きつつも二転三転する話運びが興味を引っ張り、二時間以上の長尺の多い韓国映画の中に在って100分でこれだけの風呂敷を綺麗に畳んだ構成は素晴らしいの一言です。
この"主人公の女性が目の前現実の真偽を疑うものの、周囲の人々は自分の庇護者の言葉を信じるばかりで自分の正気が分からなくなっていく"という展開は昔からよく使われるプロットですが、往年の映画では主人公を年端もいかない少女に設定して"この子の気がふれているんじゃないか?"と観客にミスリードするのが定石でしたが、本作では最初は頼りないながらも真実を知るために周囲全てを疑ってかかる大人の女性であり、彼女自身が犯罪に係わっている可能性も無きにしも非ずながら頼もしくも俄然感情移入の余地の有るところです。
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