劇場公開日 2022年10月7日

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「紋切り型と思わせ、型破りな展開。カレン・ギランの貴重な主演作」デュアル 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0紋切り型と思わせ、型破りな展開。カレン・ギランの貴重な主演作

2022年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

「ジュマンジ」シリーズで身体能力の高さとコメディエンヌの片鱗も見せたカレン・ギラン。主演作を心待ちにしていたら、今年は3月日本公開の「ガンパウダー・ミルクシェイク」、そして本作「デュアル」と続き、ファンとして嬉しい限りだ。

死期の迫った人が家族やパートナーのために、自身のクローンを作って“継承者”とするプログラムが制度化されている近未来。ただし、オリジナルとクローンがずっと共存することは認められず、クローンが廃棄を拒んだ場合は公開の場で決闘となる。

予告編や当サイトの解説でも明かされているように、主人公のサラは重い病を患い継承者を作るが、その後奇跡的に完治し、クローンとの決闘を余儀なくされる。実際、本編の3分の2くらいまでは予告編の通りに進むので、事前情報がやや多すぎなのだが、終盤の30分は話が意外な方に向かって驚かされるはずだ。

本人とクローンが対決する話はウィル・スミス主演の「ジェミニマン」が記憶に新しいし、ドッペルゲンガー的な存在と死の予感という文脈では、ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの原作小説をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化した「複製された男」や、ジョーダン・ピール監督の「アス」などが思い浮かぶ。冒頭のスタジアムで観客が見守る中、武器を与えられて決闘に臨むシーンは、「ハンガー・ゲーム」を想起させもする。

監督のライリー・スターンズは現在36歳でこれが長編3作目。メアリー・エリザベス・ウィンステッドの前夫でもある(ちなみにウィンステッドはその後ユアン・マクレガーと結婚した)。紋切り型のSFサバイバルアクションかと思わせて、生者と故人のアイデンティティや意識・記憶をめぐる問い、家族やパートナーとのコミュニケーション(あるいはコミュニケーション不全)に対するシニカルな視点を、通奏低音のように重く響かせる構成が心憎い。

カレン・ギランの魅力と能力を活かしきれていないのが惜しいが、彼女の貴重な主演作であり、今後のさらなる飛躍に期待を込めて星半分プラスしておこう。

高森 郁哉