「制作は最悪。役者は至高。」東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命 よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
制作は最悪。役者は至高。
今回の続編発表の時純粋な楽しみとある一つの疑問が生まれた。「なぜに二部作?」と。
原作のハロウィン編はそこまで長編というわけではない。多少時間はかかるかもしれないが、一作で充分収まると思う。
というか切りどころがわからない。
結構最初の方に“マイキーに一虎を殺させない”というハロウィン編の目標は明らかになるし、どちらかというと最終決戦の二転三転が面白いのに、本当にどこで切るんだ?と考えていた。
そして制作側は本当に中途半端なところで切ってきた。
何度もいうようにハロウィン編の目玉は決戦であり、それまでの創設メンバーの過去編はその決戦を盛り上げる為の前菜に過ぎない。
その前菜を一本の映画として出してくるのだから本当に呆れる。
しかも、決戦と合わせて2時間半以内に収まりきらないのならまだしも、無駄な尺を切り詰めていけば絶対収まるはずだと思う。
しかも、先述した前菜を色々調理してメインディッシュ並みの逸品にして出すならまだしもほとんど原作通りの展開だし、オリジナル展開もただただ千冬がバカになるような場面だし。もっと無駄なところを切り詰めて一本の映画でテンポよく完結まで持っていって欲しかった。
ただ、この製作陣の唯一いいところはキャスティングである。
よくもここまで主演クラスの若手俳優を集めたという感じで、しかもそのそれぞれが役にピッタリハマってるのだからすごい。
中でも村上虹郎さんの一虎は至高。
今まで原作・アニメ共にこのハロウィン編は場地さんがメインみたいな人気を誇っていた。ハロウィン編から登場するキャラでいうと場地さんの次に人気なのは千冬で一虎はその陰に隠れてる印象があった。
しかし今回初めて村上さんの一虎を見て、このハロウィン編の芯となるキャラクターは一虎なのだと実感できた。
マイキーの兄を殺してそこからマイキーを恨む展開が原作を読んでも正直言ってしっくりこなかった。元はといえばマイキーに盗んだバイクをプレゼントしようとする時点でちょっと引くし、見つかったから殺してそこからマイキーを逆恨みする??正直この過去編で一虎をあまり好きになれなかった。
しかし今回村上さんがこの一虎を演じて、自分がしでかした事の大きさを受け止めきれずマイキーを逆恨みするに至るまでの心の混乱がダイレクトに心に刺さった。
これは恐らく実写ならではの利点で村上さんが丁寧な演技で一虎というキャラクターに血を通わせたことからくるもので、ここは実写で見て良かったと思えたシーンの一つ。
そして次に北村匠海さんの武道。
前半の日向との日常パートは演出も相まってそれほどでもなかったが、日向が事故に遭って武道が日向を救うことを決意する場面にきて武道が持つまっすぐな熱量が全身から迸っていて素直に感動した。
更に、前作から何年か期間が空いてるにも関わらず、まるで昨日前作の事件が起きてたような自然な繋がりの演技で前回のダイジェストとの落差がなかったのは、役者として当たり前といえば当たり前であるがすごかった。
そして次に高杉真宙さんの千冬。後々まで武道とバディを組むことになるのも納得するような息のあいっぷりで前編からこのバディ感が出たのはすごい。
ひとつ気になったのは間宮さんの稀咲。裏では動いているもののそこまで出演シーン自体は少ない前作の方がラスボスとしての存在感があって、やっと出演シーンが増えてくる今回の方が存在感が薄いのはどういうことなのだろうか。
ひとつは前編だと稀咲が何を企んでいるのかを突き止める方がメインで稀咲自身が能動的に動いてる様を見せれないというのがあると思う。
もう一つは稀咲があまりにもカッコ良すぎる所。前作でも原作の稀咲よりもカッコよくてほとんど別物みたいになっていたが、それでも少し下卑てるような、嫉妬のような、得体の知れないドブのような黒さは見えていた。ところが今作はドブのようなドス黒い感情は無く純粋に上を目指している野心家的な悪役になっている気がした。
もちろん、先述した通り前編はまだ稀咲の出番は少ないから後編を見ないと最終的なところはわからないが、現時点ではそんなにという感じだった。
そのほかの豪華面々は今回の前編自体がまだフリの部分である為かこれといった為所も無かった。場地さんもまだ原作のかっこよさは出ず。唯一留置場でのドラケンの稀咲への憎しみの表現が凄まじかったのが印象に残る。
そして演出・脚本。ハロウィン編を二部作に分けた愚行は先述の通り。そして思ったのが無駄に冗長な日常パート。あのもじもじ感とかが原作で面白く感じるのは前作の話と続けて読んでいたからなんだなと今回気づいた。
前作で中途半端に続編を匂わせずにハッピーエンドで終わらせたのは素晴らしい決断だと今でも思うのだが、2への自然な導入という点では失敗したと言わざるを得ない。
あっくんのエピソードがカットされたのも納得いかない。あっくんが幸せに美容師をやってるというのが先にあったからこそ、その後の結局何も変わらない“運命”という言葉の残酷さが浮かび上がってくると思う。
今回の脚本で良かったのは日向の2回目の死が自分が告白する勇気をその場で出せていたら救えていたかもしれないという武道に足りないものを明確に示してる点。あとはキヨマサを有効的に活用していた点。この二つくらいだろうか。
とにかく制作が最悪で演者が最高というthe邦画な映画だった。