劇場公開日 2023年3月17日

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「死にたい心を救うのは精神科医にも、時に困難だ!」The Son 息子 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0死にたい心を救うのは精神科医にも、時に困難だ!

2023年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

あの事件が夢だったら・・・どんなに救われるだろう。

父親のピーター同様に、観ている私にもとても辛い映画でした。
あの白日夢が現実だったなら?
どんなに幸せだろう。

「人は希望を持たずには、生きられない」
その当たり前のことを強く感じました。
なぜニコラスは生きる希望を持てなかったのだろう?
ニコラスは時に父親を責める。
8歳の時、別の女性を好きになって、母と僕を捨てた。
母は長い間、苦しんだ。

そしてピーターの脳裏にはニコラスが6歳半だった日に、
海で遊び母親の乗るクルーズ船まで、岸から泳がせた日のことが
思い出される。
やっぱり臆病なニコラス。
励まし、手をひき、手を離して・・・
やっと少し泳げるようになったニコラス。
遠い日の幼く弱く可愛かったニコラス。

もっと手助けが必要だったのだろうか?
手を離すべきではなかったのか?
ピーターは後悔に苛まれる。
途方に暮れる父親ピーターをヒュー・ジャックマンを、
とても共感してみました。
誰にどの父親に最善の行動が取れただろう?
ピーターは出来る限り誠実だった。

書くことが好きで、作家になりたかった・・・?
作家の才能がないと、諦めたの?

この映画はフローリアン・ゼレールの原作の戯曲の映画化作品です。
自作戯曲をフローリアン・ゼレールが自ら映画化して監督した
ふたつ目の作品。
前作の「ファーザー」は特別に仕組まれたシーンが多くて、
認知症の父親アンソニーの視点から描かれているので、
アンソニーの妄想なのか?現実のことなのか?
観客も疑心暗鬼に陥る映画でした。

「ファーザー」に比べれば構成はシンプル。
現実をほとんどそのまま受け取れば良い。
しかしそれが簡単なことではない。

ニコラスは父親の家に越してきて転校。
しかし現実には1日しか学校へ行けない。
不登校を重ねる。

「生きるのが苦しい」
「頭が爆発しそう」
「死にたい・・・」
そう訴えられた時、私たちは何をすべきなのだろう?
何が出来るのだろう?

確かにピーターには、はっきりした対応の失敗はある。
(入院を拒むニコラスを退院させたこと)

完璧な親がいないと同じに、完璧な子供もいない。
ラストのピーターの慟哭をみて、
ピーターがこれからの人生でずうっと後悔をし続けるだろう。
子供を失った親の人生は、とても困難だ。

琥珀糖
seiyoさんのコメント
2024年9月15日

こんばんは~。

なかなか重い作品でした
色々考えちゃいますね

ヒュー様、スーツ姿も良きでした

seiyo
りかさんのコメント
2024年5月14日

ありがとうございます😊
琥珀糖さんのレビュータイトルと
いただいたコメントに納得です。
治療が難しい、ひとつ間違えば、
絶望の方向へまっしぐらですね。
親も難しいですね、

りか
humさんのコメント
2023年8月16日

希望をみた直後の辛さが尾を引く作品でした。
難しい…本当にそのとおりです。

hum
uzさんのコメント
2023年6月22日

返信ありがとうございます。

本作の場合は、方向は正しくても表現を間違えただけで死を呼び込んでしまった。
むしろ愛が重荷になったり、応えられない自分に失望したりというのもありがちです。
人との関わりに答えなどないだけに、難しいですよね…

uz
uzさんのコメント
2023年6月22日

共感コメントありがとうございます。

『愛の奇跡』なんてそれこそ奇跡で、愛が人を殺すことの方が多い。
分かっているのに、ピーターたちもどこかで「愛があれば」と信じていたように思えます。
愛の無力さを識ることで、「待てる死」が増えることを願います。

uz
レントさんのコメント
2023年6月6日

こんにちは。本作はほんとうにつらい現実を描いてましたね。家族の数だけ地獄があり、天国があるのかもしれません。私にも身に覚えがありますが、人生経験があるほど本作は心に突き刺さる作品だと思いました。

レント