The Son 息子のレビュー・感想・評価
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柔らかな和音と悲しみの不協和音が交互に響きわたる
複雑な感情が入り混じり、柔らかな和音と悲しみの不協和音が交互に響きたわたる映画だ。興味深いことに本作は、親子3世代それぞれの関係性を描くことによって、一方の側に光を当てると、自ずともう一方が浮かび上がる構造を持っている。すなわちヒュー・ジャックマン演じる主人公は、表向きは順風満帆のミドルエイジでありながら、今なお父(とある名優が演じる)の前ではどこか自分をさらけ出せない息子のままであり、かと思えば、自らもまた「ああはなりたくない」と思い続けてきた父と同じ態度を息子に対して取ってしまって愕然としたりもする。親との間にわだかまりを持ち、なおかつ息子のことも理解できない彼は、結局”自分”のことすら十分に知り尽くせぬまま人生を重ねた人間なのかもしれない。かくも戯曲ならではの立体的な関係性や練られたセリフ、俳優陣の名演に心動かされる。ことの原因に気づきながら何ら打つ手のない大人たちがひたすら哀しい。
「心の病」と「人生の選択」をめぐる疑似体験
フロリアン・ゼレールの初監督作「ファーザー」が父と娘の関係を主軸に据えたように、監督第2作となる「The Son 息子」は息子とその父の関係が中心となる。ただし「ファーザー」が認知症を患った主人公の混乱した主観を視覚的なギミックで観客に疑似体験させたのに対し、本作は心を病んだ息子ニコラス(ゼン・マクグラス)の内面に迫るというよりも、父ピーター(ヒュー・ジャックマン)の視点を主軸に、何とか息子の力になりたいと願いながらもままならない過程を客観的に綴っていく。家族内の関係性に限定せず、パートナーや友人など大切な誰かが心を病んだら、自分はどうすべきなのかを問う思考実験として鑑賞することもできるだろう。
映画に進出する前に劇作家として成功したゼレールは、前作と同じく本作もオリジナルの戯曲を自ら映画化しているが、映画ならではの演出がとりわけ印象深い場面が2つあり、いずれも「陽」から「陰」への転換が恐ろしいくらいに切れ味抜群だ。2回目に出てくるシーンについてはネタバレを避けるため書かないが、第1は、後妻ベス(バネッサ・カービー)と暮らすアパートメントの居間で、トム・ジョーンズの陽気なアップテンポ曲「It's Not Unusual」に乗ってピーターがユーモラスな振り付けで踊り出し、笑顔のニコラスが、さらにベスがダンスに加わるという、多幸感に満ちたシークエンス(YouTubeに「【本編映像:ダンスの後…】『The Son/息子』」というタイトルで公開されている)。だが劇中に流れる音楽がBGMの寂しげなボーカル曲(Awir Leonが歌う「Wolf」)に切り替わると、ダンスの輪から外れたニコラスの表情は……という映像が、息子と親との心の距離を残酷なまでに提示し、観客に芽生えかけた楽観的な予感をばっさりと斬る。
本作にはさらに、人生の不可逆な選択について疑似体験させるはたらきもありそうだ。今クールでお気に入りだったドラマ「ブラッシュアップライフ」(脚本:バカリズム)に、「不倫ってさ、(中略)最後は絶対に誰かが不幸になって終わるでしょ?」という台詞があった。「The Son」のピーターも、離婚と再婚という元に戻すことができない選択をし、そのことをニコラスから非難される場面もある。「ブラッシュアップライフ」は人生を何度も繰り返すというフィクションゆえに選択もやり直せたが、現実の人生では選び直すことのできない重大な決断に直面することが多々ある。「あの時違う選択をしていたら、今頃どうなっていただろう」という誰にもである後悔と虚しい空想を、フィクションの形で実現してくれるのも映画やドラマの効用のひとつかもしれない。
これは重い...
この作品は、公開当時、ヒュー様とハンス・ジマーさんの音楽なので、観に行きたかった
作品。
公開劇場が少なく、タイミングも合わなかったたため見に行けなかった。
配信されていたけど、有料だったため
無料になるまで待っていたしだい。
今回無料だったので、即鑑賞。
ポイントで使えば無料なんだけど、
ポイントは漫画で利用したいので…
何と言うか
親だったら、色々と考えると思う。
子供は親の背中を見て育つ
と言う事なのか…
期待のハンス・ジマーさんの音楽は
ハンス・ジマーさんぽくなく、
重厚な仕上がり
背負投げがキツすぎた。。。
2023年英仏合作のファミリードラマ。
監督・脚本:フローリアン・ゼレール
主な配役
【ニコラスの父親・ピーター】:ヒュー・ジャックマン
【ニコラスの母親・ケイト】:ローラ・ダーン
【ピーターの再婚相手・ベス】:ヴァネッサ・カービー
【うつに悩むニコラス】:ゼン・マクグラス
【ピーターの父】:アンソニー・ホプキンス
フローリアン・ゼレールによる戯曲『Le Fils 息子』を、『ファーザー』に続いて自ら映画化した。
『ファーザー』も公開時に観たが、
認知症を患った父(アンソニー・ホプキンス)を軸にしながら、「家族」というものの在り方を、リアルかつニヒルに捉えていたが、本作もアプローチは同様だ。
私の感想は2つ。
1つ目:ニコラスの病状と両親の離婚の因果関係
ニコラスが心を病んでしまったことと、
両親の離婚に因果関係があるかどうかなんて、
医者にすらわからない。
もちろん、ニコラスは、両親の離婚についてカウンセラーに話をするし、それは両親にフィードバックされる。
関係者全員が、ニコラスの状態と離婚問題を紐付けて考えたくなるシチュエーションだが、
事実はわからない。
2つ目:ラストシーン
ハッピーエンドに見えたのは「白日夢」だったオチ。
現実世界はそうかもしれない。
でも、夢オチにしないでほしかった。
人間は必ず、罪(業)を抱えて生きている。
老若男女は関係ない。
ニコラスも、両親も、わたしも、あなたも全員だ(笑)。
みんな、
許し合って生きていこうじゃありませんか!
ラストシーンの背負投げがキツすぎたので、
わたしの総評は、☆3.5
身も蓋もないことを言います‥
子供が気づくところに銃を置くなぁぁぁ〜
感動系のドラマかと思って見たのですが、重い‥重すぎる‥トラウマ映画のジャンルでしょうか。
見終わって気分爽快とはいきませんでしたがインパクトがあったので★4です。先が気になり、集中して見ることができました。
鑑賞動機:『ファーザー』10割
猟銃の話が出た時点で嫌な予感はしていた。
ニコラスに対して「何がそんなに辛いのか説明してくれ!」とピーターと同様に苛立ってしまうのは、わかりやすい答え/原因を求めてしまっているからだろうか。「わからない」を理解するのはむずかしいけど。
選択したことの責任をこの先ずっと背負い続けなくてはいけないのだね。
重たい作品を立て続けに観てちょっと疲れた…。
子育ての難しさ
この傷は親の傷。象徴するフレーズ。この映画をみていてると子育ての苦悩がよく伝わる。難しいね。何が正解も分からないし。子供以上に親に同情してしまうドラマだった。最後はまさかの結末。あれ?そっち?って思ったら、やっぱりこっちね。
ファーザーはイマイチでしたが、家族ドラマ第二弾の今作は面白かった!!
評価高すぎるのでは?
ヒュージャックマンの父親役,ちょっと期待して見始めた。離婚で置いてきた息子の相談を元妻から受けて,会いに行く。息子は置いて行かれた恨みを忘れてないし、母親ともあまりうまくいっていない。
エリートで自分に自信がある彼が息子を引き取るが,表面的な見方しかできない。結局,何もできずないまま恐ろしい結末を迎えるのだ。
最後にな新しい妻に慰められながら慟哭して終わる。
え?これで終わるのか。信頼して頼った母親のフォローもなければ,自分の何が悪かったかにも気がつかない。
こんなに良い評価なのがりかいできなかった。
もっと早く
この父親は死ぬまで、自分が妻と別れなければ、息子は死ななかったかもしれないと、ずっと
後悔して生きていくように思われた。
息子の心と身体に偏りがちな部分があるにしても、愛情たっぷりの両親が揃う家庭で育っていれば、逸れたり偏ったにしても頼もしい親の愛で軌道修正できただろう、と。
彼にとって母では駄目なのである。
父親でないと。だのに、父親は出て行った。
全て経験、過ぎないとわからない。事前には想像もつかず、ありふれた両親息子家族としてしか映らない。
父の元に行く為のスーツケースに息子が入れていたもの、幼い頃から愛して抱いていたぬいぐるみ🧸である。こんな息子だ❗️
父は、妻子がいるにもかかわらず若い女性に心惹かれ妻子を捨てた。
妻も息子も心が引き裂かれ辛い日々を送る。
妻はどうにか立ち直った体は保っているが、
息子は、取り返しのつかないところまで来てしまったようだ。
稀な難しい癌が発見されたり自覚症状が出たらもう手遅れ、と同じだ。
父が息子に関心抱き心配し始めたのは、遅すぎる。
久々の切ない作品
父もかつては息子で、今自分の息子にどう接すればいいのか。
憎む父と同じような言葉を、息子に浴びせているのに気づく場面。
切ないねえ。
息子と母を置いて、家を出たことで。
息子がどれだけ傷ついたか。
「覆水盆に返らず」なんだよね。
後味がざらりとした終わり方、でも大人として見るべきかも。
愛だけでは治せない
身内が不登校だった経験から言うと、本作の親子の行く末は想像がついてしまう。
一旦不登校になった息子を、せっかちに立ち直らせようとしてはいけない。
医師に病気だと診断されたら、息子が何と言おうと、地道に薬で治療していくしかない。
本作での一番の問題は、両親が離婚、母親とは不仲、父親は再婚という負のスパイラルである。
この状況によって、息子をきちっと見守る存在がいなくなる。
ヒュー・ジャックマン演じる父親が面倒を見ることになるが、妻は乳飲み子を抱え、自分も引く手あまたのエリート弁護士で、きちっと見守る時間がない。エリートであるがゆえに、愛情はあるべき理想の息子像への憧憬に変わり、幼少時代の無邪気だった頃の息子の幻ばかりを追う。
長期間の辛抱を要する治療と見守りを避けて、せっかちにあるべき理想像(息子は小説家を志望していた)を思い描き、息子の突然の陽気な態度に幻惑されて、元の生活に戻れると早合点してしまう。無知のなせる業である。
現実をなかなか受け入れられない両親の錯覚と焦燥が映像を蔽い、時が熟さないままに、事態は急変していく。その冷徹なまでに現実を直視する姿勢は、等身大の家族像に肉薄する、フロリアン・ゼレール監督ならではである。
「愛だけでは治せない」
息子の主治医が言った言葉が、皮肉にも説得力があり的を得ている。
息子の本当の気持ちなんて・・・
父親目線で観るか息子目線で観るかによって
この映画の受け止め方が大きく違う。
映画としては満足したけど
物語としては満足しなかった。
この父親に腹立たしく感じて
気持ちがまったく落ち着かなかった。
所詮息子の本当の気持ちなんて分からない。
典型的なダメな父親のパターンになってしまった。
すごく残念でした。
再婚した父の愛情を追い掛ける、繊細な少年の彷徨
老いて認知症となる父親とその娘の物語「ファーザー」は、主演アンソニー・ホプキンスの名演とフローリアン・ゼレールの確かな演劇演出の秀作だった。今回タイトルを「The Son 息子」としているが、主演ヒュー・ジャックマン演じる父親ピーターの視界からみた17歳の息子の精神的病を描いている。家庭の温もりを失った少年が無気力から悩み抜いて自暴自棄となり自身を追い詰めていく悲劇をじっくりと丁寧に映画にしている。その繊細な息子を救いきれないピーターの動揺と理解と叱責の演技を、ヒュー・ジャックマンが俳優キャリアに加えたいと挑戦した意欲作でもあろう。こころの病は個人によって原因も過程も症状も様々で、一つの事例を持ち出して多くのことを語るのは、専門家でない限り避けた方がよいだろう。この大前提に立てば、父親の愛情が徒となったピーターの行動とも取れる。それだけに父とまだ自立していない息子の関係は、この作品に限らず多くの映画で描かれてきた。
多感な15歳の時両親が離婚し、父が家を出て新しい家庭を持ち弟が生まれる。幼い時から両親の愛情をたっぷり受けたニコラスが、その幸せな家庭の喪失に心が傷付いたことは、二番目の妻ベスに問い詰めて怒りを露にすることで理解できる。大人の都合で離婚しても、子供には理解しがたいし、棄てられた思いは一生消えることはない。父親ピーターも同じような経験を経て、その怒りをバネに自立し弁護士として成功を収めたから、ニコラスにもっと強く生きることを求める。この要求の高さを見ると、却って借金や事件を起こして家を出た駄目な父親の方が、残された家族にとって割り切れ区切りが付けられるかも知れない。ニコラスを演じたゼン・マクグラスの繊細な演技からは、父恋しさの少年の嘆きが見て取れて、まだ成長過程の未熟さと生きる手本を求める受け身の弱さが感じられます。
ストーリーはとてもシンプルで、少ない登場人物による家族の問題を冷静に捉えた映画でした。ただ「ファーザー」で観られた演出の個性的な味わいは薄く、答えの出ない問題を投げかけられたようで、鑑賞後はスッキリしません。悩みごとの無い家庭はないし、それぞれに問題を抱えている現実に少しでもメッセージが届けられたらの制作意図を持った、真面目で深刻な作品。脚本、演出、演技、撮影と、どれもが標準以上のレベルには違いありません。でもあと一つ心に響くものが欲しかったと、正直な感想です。
個人的な経験では、親の愛情が薄い子供の表情は何処か淋しい印象を受けてきました。反対に過保護に育てられた子供は、満たされて安堵の特徴のない表情が多い。映画では、特に母親からの愛情に恵まれず不良になって悪さをする少年の犯罪映画があり、その主人公たちは何故か女性からモテ易い。母性本能を刺激する男の魅力が増しているよう。
昔一度あまりに淋しい顔をしたアルバイトの男の子がいて、プライベートなことに触れたら、父親を病気で亡くしていました。父親とは、模範的であれ、反面教師であれ、子供の社会性を育む意味で重要な意味を持つと言われています。離婚が劇的に増加している現代は、少年犯罪につながる社会問題も顕在化しています。せめて子供が成人するまで離婚はしない方が、(極端な例外を除いて)どちらにとっても問題を最小限に抑えられるのではないかと思います。
我慢の甲斐は特に無い
このサイトの紹介で衝撃とのことから鑑賞。マトモな人達を振り回す迷惑な人達を我慢して観続ける。結果、いろいろと考えさせようとする意図が鼻に付く。アンソニー・ホプキンスの老獪さが際立っていてさすが!
ファーザーと同じような感慨を得るかと思うとそうでもなく
子供が親にこうなってくれればいいのにな、と思うのと、親が子供にこうなってくれればいいのな、と思うのは同じくらい重いのだろうか。
Me too or niether
家族がいて日々の生活を送っていれば、
子供に限らず、親や配偶者、その他ありとあらゆるものに煩わされる。
実にストレスフルで生きにくいのは何もこの作品中の息子だけではない。
そういう浮き世の憂さを少しでも晴らしたくて映画を観ているのに、
もっとストレスをため込むような作品は御免被りたい。
そもそもヒュージャックマン演じる主人公は自業自得、
どんな言い訳を並べようが身から出たさび、
微塵もシンパシーを感じなかった。
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