劇場公開日 2023年5月12日

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TAR ターのレビュー・感想・評価

全256件中、221~240件目を表示

5.0ART?!

2023年5月13日
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誰か書くだろうって黙って見ていたら誰も書きゃしないじゃない、TARがARTのアナグラムだって。私やトッドの最後の映画になるかもしれないってあれほど大風呂敷広げたのに、どうも興行の方はパッとしないみたいね。やっぱりトッドの勘はあたってたわ。たとえ大物俳優(もちろん私のことよ)に渾身の演技をさせたところで、アート作品じゃ客を呼べないって、時代は変わったのね。ウォシャウスキーが『レザレクションズ』で映画とリアル(ネット動画)の共存をうたい、カラックスが“MOTAL”致死状態の映画を嘆き、リドリー・スコットがミレニアル世代の映画離れを罵倒し、ジョーダン・ピールがブロック・バスターの終焉を予言したように、トッド・フィールドは本作のような芸術映画がもはや時代遅れだってことにちゃんと気がついていたのね。だから映画の中にジャンル系(オカルト)のトッピングを混ぜてあったんだ。あんたたち大好きでしょ、そういうの?じゃあ映画についての映画ってこと、って当たり前じゃない、あんたたちどこ見てんのよ。聞く人がいないとうまく歌えないって私が冒頭教えてあげたでしょ。見る人がいないとうまく演技できない、つまり、ケイト・ブランシェットがケイト・ブランシェットを演じた映画でもあるのよこの映画、わっかるかなぁ、わっかんねぇだろうなぁ。私が演じたターよりも、それを動画に撮っているのは誰かってことで、あんたたち盛り上っていたらしいじゃない。まるでターが実在しているかのようなごっこをしてネットで遊んでたって噂よ。私とトッドが心配してたことまんましでかしてどうすんのよ。本チャンのライブ(映画)よりも、指揮者(役者)本人のスキャンダルの方を見る人がずっと多い、っていう本末転倒現象のことを言ってるの。キャンセル・カルチャー云々はどちらかというとその副産物ね。アケルマンへのオマージュショット※だって“映画についての映画”であることのちゃんとヒントになってるでしょ、気がついてよったく。フィリピンの滝のシーンで、案内係のバカップルがリディアのことそっちのけで遊び呆けてたでしょ、(滝の)スクリーンの中の私をひとりぼっちにして。水槽の中の風俗嬢だってみんな目をふせていたじゃない。そんな誰も見ない芸術映画を自己満足でつくったって意味がないってこと。たとえ系統は違っても若い人たちがノリノリで見てくれるエンディングのような、どんな形でも映画が生き残る道を考えるべき時代に突入してる、ってことを言いたかったのに、ったく。

※この映画実は過去の名作へのオマージュらしきシーンを、他にもたくさん発見できそうな作品です。気がついた部分だけ列挙しますが、おそらくこれだけではないでしょう。

・常時精神安定剤を服用し、饒舌かつ神経質、#me-tooでパージされたコンダクターは、トッド・フィールドが映画のイロハを教わったというウディ・アレンがモデルなのかもしれません。

・一連のボクシング練習シーンとカプランぶん殴りにいくシーン→ロッキー

・チェリストを追って廃墟でリディアが迷子になるシーン→ベニスに死す or ストーカー

・リディアが口から煙を吐く幻覚シーン→地獄の黙示録

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かなり悪いオヤジ

4.5理性と感性と

2023年5月13日
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怖い

知的

難しい

「指揮者の故郷は演奏台」

カッコつけます。これは現代の「8 1/2」であり、「地獄の黙示録」です。
正直に言います、よく分かりません。
理解したければここまで登りつめて来いという、そういう作品です。
そして何より、徹頭徹尾マイノリティに配慮した(或いはせざるを得なかった)作品に映りました。
冒険しているのに堅牢、僕はあまりスマートフォンやタブレット端末が登場する作品は、(サイバーものでもない限り)作品の奥行きが損なわれる気がして好かないのですが、ここでは全く雰囲気を損ねていないのは見事。
そしてケイト・ブランシェットの多彩ぶりに驚くばかり。ピアノは弾く、ドイツ語はペラペラ話す、エンドロールを観たら「指揮:ケイト・ブランシェット」表記の多いこと多いこと。おっと、「多彩」という言葉は現代においては否定的な表現でしたね、専門性がないと生きていけない。
私事ですが、最近ベルリンを舞台にした海外ドラマにハマっておりまして、本作の主な舞台もベルリンということで、華やかなりしも陰を漂わせるのはベルリンならでは。作業場にフォルカー・ブルッフやリヴ=リサ・フリースが突然現れるのではないかとドキドキしました。
ただ、マーラーの交響曲第五番第四楽章"アダージェット"はやや軽かったかな?あれではダーク・ボガードが未練タラタラになってしまう(劇中リハーサルでもヴィスコンティに触れていましたね)。

人生を安全に生き抜くには徹底的に感情を排除しなければならないが、人間そうはいかない。いわんや芸術家をや。本作で取り上げられた問題はあくまでも氷山の一角で、恐らく至る所で起こっていたのではないかと推察します。

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ストレンジラヴ

3.0強烈な音楽家のお話だった もう少し短くまとめてくれたら良かった

2023年5月13日
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強烈な音楽家のお話だった

もう少し短くまとめてくれたら良かった

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jung

4.0芸術と生活の葛藤・現代版

2023年5月13日
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2022年。トッド・フィールド監督。ピアノを弾き、古典音楽の歴史にも音楽理論にも民族音楽にも通暁して、指揮者としてトップに上り詰めた女性が転落していく様をリアルに、かつ、現代社会批判として描く。
昔から天才芸術家は生活面では壊れていることが多く、そのことを表現する文学作品も映画作品も多い。この映画もその「天才ジャンル」の正統的な流れに沿っている。破綻の原因が恋であることもパターンといえばそれまでだ。異なるところは、女性主人公がレズビアンを公表しており、相手が女性たちであることと、悪意あるSNSによって集団内の出来事がすぐに一般的な倫理規範にさらされて反論の余地がないということだろう。SNSは特殊事例を許さず、あらゆる出来事を標準化・一般化の圧力にさらす。民主主義の原則をどこまでも完遂しようとする。しかし、天才は民主主義にはなじまない。才能は平等ではないから。
天才の描き方も新鮮だった。この映画では、主人公は自らの天才ぶりに自覚的であり、その意味では生活者の資質を持っている。したがって、天才であること=普通の生活者ではないことに恐れを抱いている(天才の自意識)。それを表現するために、ちょっとした生活音におびえる様子が細かく挿入されているし、自信を裏切る若い女性演奏家の姿を見ても我を忘れて怒るのではなく、あきらめとともに受け入れている。没落後の生活も音楽に奉仕するかのごとく淡々と描かれている。
天才であることが特別視されない現代社会をよくわかっている天才の悲劇、というところだろうか。

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文字読み

2.0クラシックの知識がある方向き

2023年5月13日
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前半のモタモタ感はクラシックの知識が有れば乗り切れるかも 後半のバタバタした展開も前半の伏線が理解できれば楽しめるのだろう 始まって30分で置いて行かれた私には残り2時間は辛かった

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トシ

4.0レヴァインwデュトワww

2023年5月13日
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ブランシェット凄すぎ。冒頭インタビューとそれに続く音楽院講義シーンでの台詞の抑揚・緩急・間、眼と手の表情等、全てに圧倒され,あっという間に見終わった。

並外れた才能・野心・使命感に相応しい栄達と,それを失うまいと守勢に入った時の痛々しいほどの不器用さとの対比が鮮烈。

女性は指揮者には不向き、と言い続けた岩城宏之氏が御存命なら、どんな感想をお持ちだろう?

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ひろちゃんのカレシ

5.0権力者は賞賛も嫉妬も誹謗中傷も「都落ち」も全て受け入れる覚悟を

2023年5月13日
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怖い

興奮

知的

音が苦手で、雑音も騒音も時計のカチカチ音もダメだ。夜の工事音やアイドリングやお喋りが我慢ならないレベルに達すると110番してしまう。ラジオやテレビはめったにつけない。音楽を聞きながら歩くことも仕事をすることもない。皿洗いや料理やダンスなど自分も盛大に音と共に動く時だけ音楽を流す。

だからこの映画の不穏な音はとても怖かった。一度気になったら正体が分かって完全に止めるまで安心できない。でも背筋が痺れて鳥肌がたつ感動もあった。前半のTarの指揮によるオケの音だ。この映画の音響は本当に素晴らしい。映像も。

権力の最高峰にいるTar、歩き方も指揮する姿もインタビューに滔々と答える様子もケイト・ブランシェットにしかできない。リハーサルでのオケメンバーへの指示にも魅入られた。英語である必要性、ドイツ語である必要性に説得力があり、強くて適切な緊張感のあるドイツ語をマスターしていた。

Tarをフィクションの女設定にしたことで、過去の、今の、リアルだった(過去形にしていいのかわからない)男性中心の権力構造が裏返しに透けて見えた。おぞましくホモソーシャルで限りなく傲慢で極端な身贔屓。のし上がるための情報源確保、自分の地位を脅かしかねない者や気にくわない者は丁重に結果的には蹴落とす。自分にとって愛らしく能力ある若い存在はペットのように側に置き鼻についてきたら捨てる。権力トップに座すれば性別関係なく起こる。それほど権力は強烈で甘くて毒がある。その毒は権力者自身にもまわる。

「ブルー・ジャスミン」と通底するが、TARは見てからの疲労感が凄まじかった。
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でもトッド・フィールド監督はブルー・ジャスミンの監督とは異なる。Tarの「都落ち」の先にはピラミッドの無い、みんなが楽しいホモ・ルーデンスの世界が待っていた。Tarは子どもの頃の夢に戻って自由な時空を思い出し回復する。二回目鑑賞してTarの思考と感情に少しだけ近づけたように思う。

迫りくる老い(すっころんで顔に大怪我)、死(隣人の母親の死)、絶望(女性若手指揮者の自死に始まる自分の転落)を苦しく味わい腹から身に沁みて、Tarは再生し希望への一歩を踏み出す。Tarはヴィスコンティの主人公のように「ベニスに死す」ことなく、音楽以外は潔く捨て「アジアに生きる」。(2023.5.15.)

おまけ
マーク・ストロング、髪の毛があったので本人だとわからなかったー!大好きだから残念だった(再度鑑賞で確認できました!)。

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talisman

4.5歪みと女優力

2023年5月13日
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69本目。
BGMがなく、音楽を扱った作品だから、沈黙も含め、スクリーンから出る音全てがBGMかと勝手に解釈。
序盤の長回しでの、指揮者としての知識、説得力、終盤までの演技を観て、そこまで意識した事なかったけど、ケイトブ・ランシェットを好きになってる。
紆余曲折を経て、最後は圧巻のと思ったら、何処かで掛け違えたボタン。
狂っていく様子が、ミステリーだったり、サスペンスの様に感じる。
でも、最後があれとはね。
大分、予想外。

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ひで

4.0緊張感が途切れない

2023年5月13日
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特別ドラマティックな出来事が起こるわけではないのだけど、日常の中で起こる出来事が物語の緊張を高めていく。それは音であったり、人間関係であったり、メールであったり。抑えた演出が、逆に凍るような緊張を高めている。長尺な作品だが、最後まで緊張感が途切れることがない。

優秀で飛びぬけた業績を成し遂げてきたターが、崩壊していく過程に引き込まれる。表面上は人格者で、性格上問題のない社会人に見えるターだが、心の深いところで傲慢さや冷酷さを宿している。それがスキャンダルや人間関係の軋轢を生んでいく。

ターを演じたケイト・ブランシェットの演技はもちろんのこと、脚本や硬質な映像を映し出すカメラなど、作品としてのクオリティがとても高い。
あまり一般向けとはいいがたいが、洋画上級者の大人向けの作品といえる。

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CR7

4.0これはスゴい作品、ケート・ブランシェットさんの演技に圧倒される158分

2023年5月13日
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ダーレン・アロノフスキー監督の「ブラック・スワン」やフローリアン・ゼレール監督の「ファーザー」に似た雰囲気を持った作品ですごく好き、一気に引き込まれ158分の長尺を全く感じず、すごく面白かったです

何よりケートさんの演技が素晴らしかった
力強く、勢いと威圧感MAXで高い自尊心とプライドに満ち溢れた女王様が徐々に壊れていく様は圧倒的、彼女のキャリア最高傑作と謳われるのも心から納得できました

トッド・フィールド監督の演出と脚本も素晴らしかった
不穏な音楽と映像で、終始とてつもない緊張感に包まれ、観終わった後、硬直していた両肩の力が抜けて一気に落ちる感じ、それぐらい全編に漂うテンションの高さが半端ないです

クラシック界の話だけど音楽よりも“音” にフォーカスが当てられており、いろんな音が出てきて、嫌〜な感じがいいです

全体的に暗い映像もすごく好き
いつも曇り空、薄暗い室内、“何か”がいそうな闇
そして一番気になったのは“余白”を感じる構図としょっちゅう出てくる鏡越しの映像、主人公が壊れていく過程の二面性を象徴しているのでしょうか

後半の展開によってフィクションとノンフィクションのシームレスな世界に混乱しはじめ、観終わった後、始めからもう一回すぐ観たくなる傑作、すごく面白かったです

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Jett

3.0本作を楽しめる側の人間では無かった

2023年5月13日
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レビューを見て覚悟はしていたが、想像以上に見る人間を選ぶ作品だったように思う。
特に冒頭の30分。
超絶音楽音痴で、小学生や中学生時代の授業で何を聴いても読んでも感想を書けない、思いつかない、感性というものをほぼ持ち合わせていない自分には何の共感も沸かない言葉ばかりまくし立てられ、ただ「早く次行けよ」と思っていた。
中盤から物語が加速するというようなレビューを見ていた為、期待して見続けたが、自分的にはあまり加速せず終わった(笑)
(三輪車から補助輪付き自転車ぐらいまでは加速したかな・・・)
本当に最後の最後の方のあの激しいシーンは少し「おお!?」と思ったが、その前に何故あの男性があそこに立っていたか分からなかった。もうちょい説明求む!

しかし、駄作だとは思わない。レビューの題名に述べた通りなのだろう。

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tkyk

3.5かなり待たされたトッド・フィールドの新作ということで自分がハードル...

2023年5月13日
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かなり待たされたトッド・フィールドの新作ということで自分がハードル上げすぎた感もあるけどケイト・ブランシェットの演技が圧巻でそれだけで充分おつりがくる

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teraox

4.0ケイト・ブランシェットに尽きる

2023年5月13日
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ケイト・ブランシェット渾身の演技による凄まじい迫力の映画。
主人公のリディア・ターは、非凡な才能に恵まれた女性だ。本業の指揮ではベルリン・フィル初の女性主席指揮者となり、作曲や執筆もこなす。頂点に君臨した女帝が、ある事件をきっかけに転落する様を丹念に描いていく。
正直、楽しい映画ではない。頂点に立ちながら彼女は少しも幸せそうに見えない。意味不明なシーンも多々あり、観客に考えることを要求する。
だが、監督・脚本のトッド・フィールドが創造した人物に、ブランシェットが命を与えた。その奇跡を目の当たりにする価値は確かにある。

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ぽてち

3.0タイトルなし

2023年5月13日
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観念的なだけで内容がなかった。ケイトもリアルじゃないし。知的な会話の全般が無内容で見せびらかし感だけなので、それが狙いだとしてもしんどい。

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えみり

4.0愛と感覚、"マエストロ"の研ぎ澄まされたそれらから感じる今の世界の生きにくさ

2023年5月12日
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"時" Time is the thing.
作品前半の圧倒的長回しと長台詞。その中で彼女は言う、"右手の秒針で時を止める"のだと。そしてこうも言う、"指揮者は自我も捨てて、作曲家に全て捧げる"と。となると、止めることができない、自分の思い通りにできない"音"=自我の表れか。"医者の不養生"じゃないけど、この世界で自分がコントロールできないものとしての表象。
そうした作品の導入部とそれ以降の変わっていく作り・語り口は、主人公ターの半生や輝かしいキャリアなどには冒頭で尺を割きながら、他のキャラクターやその関係性にはこれといった説明無く、この映画自体が始まるそれ以前から既にもう始まっており途中から語られ始めることを強く意識させられるようだった。

一時(いっとき)、一音、一ミリも退屈しないで、居心地の悪さを共有するように胃がキリキリムカムカとするように神経に障りながらも、どうなるのか気になって仕方ない。静かに時に激しく徐々に壊れていく心理サスペンス/ホラー…。女性、ドイツ、そして偉人たちの欠点や暗い一面。あるあかは何処かからする"音"の正体と、走るトンネル。SNSや下世話な週刊誌ゴシップとかスキャンダルに群がるロボットたちとルール。高みに到達したらあとは落ちるしかないのか?(決して楽しい夢ではないが)夢でも見ているように迷い込む。

怖いくらいに迫力と溢れんばかりの魅力カリスマ性がある彼女の一挙手一投足から目が離せない圧倒的ケイト・ブランシェット劇場!これは私のスコア!! 言葉の節や言い回しのニュアンス一つ取っても説得力がある彼女の佇まいはオーラありありだし、本当に鬼気迫るものがあった。真の高みを知る者の苦悩と周囲の雑音。
メンズライクなジャケット&パンツスタイルが安定に似合い過ぎな美しく惚れ惚れするほど格好良い我らがブランシェット姐さんだけど、やっぱりそんな彼女でさえ、男性と一切臆することなく頑と対峙したときに、"激怒した相手が襲って来ないか?"など見ていてヒヤヒヤとしている自分がいた。

それくらいどの画も緊張感があってとても良かった、というか凄かった。時に意表を突くようにキッレキレな編集然り。表面上の展開だけ掬い上げて文字に書き起こしたら、きっと既視感の覚えるようなものになっていくのだろうけど、実際見ているときはもっとこう感覚でやられる。今までの時代というか今日も、地位のある力の持った男性が女性を囲い込むことなんて(キモいけど)普通にあることだろうと皆受け入れているだろうに、それが女性となると叩かれるのか?男と置き換えて見てみる。
"マエストロ" マルチな=多才は好まれない今の時代?何もかも失って命を削って、自分が愛した表現とその理由に、言葉でなくもっと感覚=愛(を持って)で向き合うには、これだけの時間が必要だった。汚いくらい剥き出しに、あるいは上述したような世界の回り方を、キレイな部分だけじゃないところから見て気付くこと。ハッと目が覚めるような感覚。

RAT ON RAT

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とぽとぽ

4.0観たい度◎ 鑑賞後の満足度◎ 今まで観た映画の中で最も面白い(興味深い)女性キャラクターの一人。

2023年5月12日
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①全編を圧するケイト・ブランシェットの演技が凄い。既に当代一の演技派大女優の名を欲しいままにしている彼女だが更に高みに登った感がする。誰が今年のオスカーを取ったのか忘れたくらい(『エヴエヴ』のミッシェル・ヨーでした)、何故彼女が取れなかったのか不思議なくらい。
でもヴェネチア映画祭をはじめ名だたる映画賞は彼女が取っているのでまあ良いでしょう。
②私は音楽が好きだが(といってもポップ・ロック・歌謡曲が好きなミーちゃんハーちゃんですけど)、音楽の素養もないしクラシックも殆んど聴かない。
音楽がわかっていたらもっと面白いのだろうと思うけれども、リディア・ターという女性の生き様を追うだけでも面白い。
三時間近くに及ぶ長尺だけれども少しもスクリーンから目をそらせなかった。
③ターが養子のペトラが学校でイジメられているのを知り、イジメっ子を脅すシーンのケイト・ブランシェットの演技が怖い。
それと共に、この些細なシーンか大事なのは、“私が言ったということを人に話しても信じないわ。だって私は大人だもの”という台詞の‘大人’を‘ター’に置き換えると、この時の彼女の心理が透けて見えるからだ。この私‘ター’に刃向かえるものはいない、という驕りである。
そして、その驕りが後半彼女の脚をすくうことになる。
④ターという女性の性格やその時その時の心の動きをを表すのに、彼女の行動や表情のみで描写しているのも実に映画的。
冒頭近くの巨匠と呼ばれる人たちの床に敷き詰められたレコードを素足で分けていくシーン。ここは後に転落した彼女が自分の生家で若い時何度も観ただろうビデオ画面(カラヤンだったと思うけど)を前に涙を流すシーンと対になっている。
⑤指揮者という仕事をしている彼女だが、その私生活では不協和音(雑音)が多い。
彼女をレズビアンにした設定は巧いと思う。これで少なくとも男女関係というある意味一番の雑音を排したから。
これにより彼女を悩ます不協和音(雑音)がどういうものかより明確に描写できたと思う。
⑥全編張り詰めた空気を漂わせているが、2箇所だけ思わず笑ってしまいそうになるシーンがある。
1つは地下通路で何か(誰か)に追われて階段を駆け上がった時に躓いて倒れた際に、見事に顔から石段のへりか何かに激突する場面。あまりに見事な転け方だったので、他人の不幸を思わず見た時に現れる私の心のダークサイドが私を微笑ませてしまった。
2つ目は、レッスン用のアパートの大家が亡くなって家族か親族が「部屋代を値切られるから、“騒音”を出す時間は決めて欲しい」といわれた時、“音楽”を“騒音”と言われて(まあ、わからん人には確かに騒音でしょうな)ブチキレたターが、アコーディオンを鳴らしながら本人たちを前には言えなかった本音を歌で吐き出すところは、ターの素の部分(人間らしい部分)が出てしまったようで可愛く笑ってしまった。
⑦この後は、も一回観てから…

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もーさん

3.5騒音や環境音から主人公の心情が伝わるような表現を含めて、独自の空気...

2023年5月12日
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騒音や環境音から主人公の心情が伝わるような表現を含めて、独自の空気感が漂う本作、終盤まではなかなか楽しんで観れていたのですが
最後のオチを含め、折角終盤まで積み上げたものが台無しになった感があり、蛇足感が否めない
折角丁寧な作りだっただけに、もう少し最後は上手い事まとめるか、突き放すような終わり方をして欲しかった

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nkbata

4.5よく書けたリアルな脚本に感心

2023年5月12日
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この映画の脚本はよほどクラシック音楽界に詳しい人が書いたのか、いかにもありそうなシーンを丹念に作り上げて特異な主人公を見事に造型している。冒頭のインタビューなどはまるでドキュメンタリーのようなリアルさだった。才能ある人間の業が痛々しいが、そのキャリアの破綻の描き方も現代的で、これまたリアル。何も知らずに見たら、実在のモデルがいるように思えてしまうだろう。

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Boncompagno da Tacaoca

4.5劇場で観るべし

2023年5月12日
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長回しフェチなので、ジュリアード音楽院のシーンには痺れました。あと「音」の演出が素晴らしかったです。スマホの着信音、ドアベルやメトロノームの音、謎の悲鳴、字幕の無い外国語など。うまく説明できませんが、さまざまな音の積み重ねによって、じわじわと不安感が煽られていくような気がしました。ケイト・ブランシェットさん、ああいう演技をさせたら世界一ですね。「ブルー・ジャスミン」と二本立てで観たくなりました(笑)。

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ハチ

4.0まさかそちら側からの

2023年5月12日
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事前情報を入れずに鑑賞した。
偉人物語と思い込んでいたので、始まるとなにを描いているのかよく分からなかった。
だがエンディングに近づいていくにつれて、まさか今社会問題になっている、そちら側を映していたのか、と衝撃を受けた。

ケイト・ブランシェットは美しく、素晴らしい演技。眉間のしわもこの人には問題ない。ただ立っているだけでも最高にカッコいい。
いま一番魅惑的な俳優だと思った。

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ニモ