「泥舟に乗ってるのはいったいどちらか?」TAR ター やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
泥舟に乗ってるのはいったいどちらか?
実際長い長い映画でしたが(笑)、久々ケイト・ブランシェットさんの熱演、怪演がみれたのは大変な収穫でした。画面吸引力が凄まじい女優さんです。その一挙手一投足に刮目せざるを得ません!
今回の作品において、こと音楽に関する自らの審美眼には1ミリたりとて妥協しないし私的感情を持ち込まない、そして旧態依然とした組織に対して全く忖度しない非常に男性的な側面が際立っていて、男が惚れる男っぷりを発揮されていたのが印象的でした。
能力がある無いに関わらず、女性地位向上ばかり声高に叫ぶ輩、性的マイノリティが悪影響し色眼鏡でしか芸術を評価できない者、他人の足を引っ張る事でしか浮上出来ない凡人達など・・・彼らと比較したら、その孤高の天才ぶりが浮き上がって見えるようです。
ただ、たぶん仕事以外の部分でもその「男っぷり」を遺憾無く発揮した結果(笑)その凡人らの妬み嫉みを全身で受けてしまいました。
あることないこと、いやー怖いもんです・・・特に女性からの嫉妬は(あー言っちゃった)。
権威からの失墜も、ド派手にまるで狂人の様に描かれていましたが、ここの演技も凄まじかったです。
しかし!なんで彼女が楽団での職を失い、失墜した後の後日談がまるで敗者の傷口に塩塗るように痛々しくしかも案外丁寧に描かれたのか・・・良く考えてみたんですわ。
これ、なんか違和感ありませんか?
私は、今やCDが売れない、コンサートで人が集客出来なくなった音楽業界で、どこぞの有名楽団の指揮者にしがみつくことが本当に自身の芸術の世界規模での発信に役立つのか・・・甚だ疑問に感じるのです。
5年、10年先、どちらが泥舟か考えた時、これは決して悪い結末じゃないな、と真面目に思いました。
では。