「二代目の「今後」に期待をつなぎつつ今は静観…」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド いたりきたりさんの映画レビュー(感想・評価)
二代目の「今後」に期待をつなぎつつ今は静観…
マーベル映画はいちおう劇場にて全作鑑賞済み。テレビシリーズの方はまったく観ていません。その程度の予備知識で臨んだキャプテン・アメリカ最新作。同作についてはすでに多くの人がコメントを寄せており、ダブるところも多いかと思いますが、気になった点を以下に記しておきます。
まず作品以前の問題として、予告編でバラし過ぎです。ストーリー自体「誰が赤いハルクになるか」で引っ張る体裁をとっているのに。コレじゃ、さっぱりわやや。
余談ですが、近年の映画の中でホワイトハウスをぶっ壊す頻度が高まっているように感じるのですが、気のせいでしょうか。日本だと国会議事堂を壊すゴジラみたいなものでしょうが、さすがにもうエエやろというキモチになります。
次に気になったのは、本作が事実上『インクレディブル・ハルク』(2008)の続篇にあたるということです。歴代マーベル作品の中でも興行収入がもっと上位の大ヒット作ならいざ知らず、よりによって同作とは。過去に観ている自分でさえ、このエドワード・ノートン版ハルクは、MCU拡大路線の過程でラファロおじさんのイメージによって上書きされ、記憶の彼方に霞んでいます。今さら緑のオッチャンやらリブ・タイラーが現れたところで、「誰これ?」の思いが先立ち、ビックリ感が削がれてしまいます。
さらに付け加えると、『インクレディブル…』を含むマーベル諸作品でウィリアム・ハートが長らく務めてきたロス長官役を今回ハリソン・フォードが引き継いだことも、同作との乖離を感じさせる遠因として挙げられるかも……ハート逝去というやむを得ない事情があるとはいえ。
ちなみに『インクレディブル…』の劇中、ポトマック河畔の桜並木が「親子の思い出の場所」となるシーンはありましたっけ? ホントなにも覚えてなくて面目ない(泣)。
なお、本作の参考作品として『エターナルズ』(2021)やミニ・テレビシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021)の方もよく挙げられていますが、こちらは未見でもかまわないかと。いちおう言っておくと、今作で日米間の国際紛争の火種となるインド洋沖の「島々」は前者が出典元ですし、元超人兵士の高齢黒人男性と二代目ファルコンのキャラ2人は後者のミニ・シリーズが出典元だそうです。なるほど。
ここでミニ・シリーズやキャラの話題が出たついでに言うと、ウィンター・ソルジャーことバッキーが、びしっとスーツ姿でキメて本作に登場したことはびっくりでした。かつてスターク社長(アイアンマン)の葬式すら私服で参列していた、あのバッキーが…と感慨もひとしお。
そんな彼のバディだったサムこと新生キャップは、折に触れて「その泣かせるセリフは脚本どおりかい?」と楽屋落ち風のギャグをかましたり、「オレって所詮ただの人間だからな」「こんなことなら超人血清打っときゃよかったよ」みたいな自虐ネタを吐いたりします(…とはいえ、あんなに刺され負傷してもへっちゃらな肉体は、もはや超人兵士の域に達していると思いますが)。
その胸中を察するに、「先代キャップの跡目を継ぐ」という重責のみならず、「ブラックパンサー亡きあと黒人ヒーローの頂点を担う」といった気負い、あるいは「ディズニー幹部からの過剰な期待や横槍に耐える」的なウラ事情(←完全な憶測です)などが渦巻いていたのかもしれず……。
とはいえ、大統領官邸にお呼ばれされてウキウキしている場面などちょっと思慮が浅いのではと心配になったし、ところどころで「国防に勤しむ退役米国軍人」のスタンスが強調されるのもアメリカ・ファーストを匂わせてなんだかなぁ、って感じです。
よく歌舞伎役者や噺家などが襲名披露興行を経て「化けた」「芸が一段も二段も上がった」と称されることがありますが、この点では二代目キャップの「今後」に期待をつなぎつつ今は静観する、といった感じです。
さてもう一つ、気になったのが、インド洋沖でレアメタルっぽい鉱物資源を巡って日米間に一触即発の緊張が高まるくだりです。現実のインド洋の覇権をめぐってはインド、中国、アメリカといった大国に加え、日本、イギリス、フランス、オーストラリアなどが画策する国際情勢となっていますが、この映画で表立って登場するのはせいぜい日米仏印くらいで、中国など影も形もありません。イジワルな見方をすれば、中国だと諸々マズいが、日本を仮想敵にしとく分にはノープロブレムってことなのかも。
さらに、このシークエンスで日・米両軍が空母と戦闘機でつばぜり合いを繰り広げる画など、さながら真珠湾攻撃やミッドウェイ海戦を連想させるのですが、アレでよかったのかなぁ。また日本軍(航空自衛隊?)パイロット同士の無線通話がアニメの吹替えっぽい音声・喋り方だったのも少々興ざめ。……と、いろいろ細かいこと言ってスビバセン。
最後に、もうひとこと付け加えると、本作全編にわたってテレビドラマ風の劇伴が流れ続けていましたが、アレは案外耳ざわりでした。またエンドロール後の恒例オマケ映像は鉄格子越しの対話というシチュエーション自体が「またか」といった印象だし、そもそも「あんたに言われんでもその程度は想像つくわ」と思ってしまいました。いや最後の最後まで、細かいこと言ってスビバセン…。