「新キャップ映画デビュー戦、よくまとまってる」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド himojoさんの映画レビュー(感想・評価)
新キャップ映画デビュー戦、よくまとまってる
前評判もありあまり期待せず見に行きました。しかし思った以上の出来で、短めの上映時間ですがタイトでスリリングによくまとまっています。
サムが危機に直面することで、彼が背負う期待と責任で抱く葛藤を描きつつも、先人から受け継いだ覚悟を感じます。
予習してドラマで二代目キャプテンだったジョンウォーカーの言動と比べてみても自分が盾を背負う立場としてどうするべきかをよく考えているかがわかるようになっています。
ストーリーラインの描き方もたとえ軍人であっても大統領であってもヒーローや悪役でも徹底して人間であることを忘れていないのも好印象。新しいキャラたちも!
本作の物語の背景にある米国と緊張関係にある軍事大国に日本が選ばれたのは現実の政治をリンクさせすぎない為の配慮でしょうか?それとも米国にとって重要な同盟国だからでしょうかね?
新キャプテンはスティーブよりも寛容で対話上手でこれからのヒーロー像になってくれるでしょう。彼はたとえ敵であってもその相手を見捨てない強さがあります。
~~~Filmarksで書いた評も編集して追記。~~~
「あんなに赤かった?」
国際情勢の緊張関係で過去の行いが咎となり、立場の悪化で大統領が外国の憂慮もよそに自国利益のための血迷った発言を官邸内部で発言、いよいよ報道陣の前でレッドハルクに変身してしまう。この“赤い核弾頭“はもちろん現在の共和党のメタファーでしょうね。
副題Brave New World とのタイトルは有名なディストピアSF小説からの引用かと思い、直接のオマージュを探したが見つからず。全ての者が幸せに暮らせるように遺伝子操作から職業や階級分けまで管理社会で統制した世界に疑念を持ち始める主人公が最後に自由を問いかける話です。
本作の物語における重要なモチーフは“桜”。他の人も書いておられるが、戦前の1912年東京市長だった尾崎行雄がソメイヨシノの苗木を寄贈。日本首相の名前も娘との思い出もこのエピソードからでしょうか。「敵であってもいいところはみつける。」現実との政治的なリンクを陰謀論的にしないよう上手に回避しつつも本作のメッセージは現実の日本との関係を散りばめさせながら混迷を極める国際情勢と米国はどのように相対すべきかについて思い出の“桜”が物語り指し示しているというわけです。大切な思い出にはハルクではダメなんだと悟ります。
それから“あなたの姿を見ている人がいること”ですね。この映画、情報の媒体物がよく映されます。諜報機関を持たない市民はネットやテレビを通して情報を見てます。ある人はスマホであなたに恨みをもって見ているかもしれない。ある人はあなたの行いを英雄視しているかもしれない。そうした人たちがあなたを貶め攻撃するかもしれない。協力しに会いに来るかもしれない。あなたと同じヒーローになろうと思うかもしれない。あなたの行いが正しいか悪いか判断に迷ってるかもしれない。
だから市民のヒーローであることを期待されるサムは実際に人と対話して相手の反応を見て信じられるかどうかで自分がどうするべきか決めるのです。それが現代を生きる市民のヒーロー像とMARVELは考えてるのですね。