「NZの住宅事情が垣間見える本作」ドライビング・バニー Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
NZの住宅事情が垣間見える本作
NZに住んでいた時期があったのでヒーター1つにも懐かしさを覚えながら見た。触ると熱いんだよねあのオイルヒーター。
主人公のバニーは生活能力が無く前科持ちで、二人の子供は里親に引き取られており自由に会うことも出来ない。子供達と娘の誕生日を一緒に祝うことを強く望んでいるが仕事も住所もないままではそれも難しい。妹夫婦の家のガレージに済ませてもらうことで住所を確保し、ようやく生活を立て直す見込みが立ったところで、妹の夫が継娘を口説いているのを見てしまい・・・
NZで人口が最も多い都市オークランドが舞台だがニュージーランドーと聞いて思い浮かべるような雄大な自然や羊の群れなどは出てこない。
NZはここ数十年で貧富の差が広がり、特にオークランドは住宅が足りず共働きでも金持ちを除いてマイホームは夢のまた夢。実家を出ても単身で暮らすことはまず不可能でフラットシェアを余儀なくされるほど家賃が高いため、街中にホームレスも多い。家を買えても部屋を他人に貸さないと月々のローンも払えない。本編でも言及されていたようにガレージまでもをフラットのように貸している家庭も珍しくない。(余談だが大家がリビングで寝起きして、他のベッドルームをすべて貸しているというケースもあった)
これは日本でもそうだが、路上生活者が生活を立て直すのが難しい一因は、そもそも住所がないと仕事が見つからない、仕事がないと住む場所が見つからない、というジレンマがあるからだ。(だからこそワーキングホリデーなどで海外に行くときはホームステイで住所だけまず確保しなくては仕事も見つからないし銀行口座もつくれないのだ。)
バニーの妹の夫に対する怒りには理解できるし、実の娘の性被害を信じず夫をかばう母親もクソであるが、バニーはいくら子供が恋しいとはいえあまりにやり方が反社会的で、詐欺泥棒まがいのこともやらかすので共感はしにくい。
どうもバニーが性格なのか知的グレーなのか、3歩先のことが考えられず衝動的に行動してしまう。規則を破って子供に電話をかけたりと自分で首を絞めるようなことばかりしている。(そもそも親が育てられないなら里親が良い人なら里親のもとにいるのが子供のためなのだと思うが。)
バニーの前科が夫殺しだということもわかってくる。本人曰く子供を守ろうとしたようで、子供二人が懐いていることからしてもまったくの嘘ではないのだろうが、過剰防衛だったのか警察での態度が悪かったのか供述は信じてもらえなかったようである。バニーの態度を見てるとさもありなんという部分はある。
バニーはけして悪人ではないし子供に対する愛情もあるが、だからといって親に向いているとは限らないのだなと。
バニーは破滅的な道しか選べなかったが、子供二人に罪はないのでどうかすくすくと育って欲しい。妹の子トーニャも。