とべない風船のレビュー・感想・評価
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決して忘れないよ✨
どうしようもない悲しみを乗り越え また前を向いて生きる事は 容易ではない… でも、生きている者は、 その命を精一杯生きて全うすることが使命なのかな。 輪郭がぼんやりしてきて、忘れていくのが怖い…と憲二は泣いていたけど… 大丈夫、忘れるはずない、忘れられるはずないでしょ、だから大丈夫。 島の人々や多島美と呼ばれる瀬戸内の景色が、とても優しく包んでくれる。 都会で傷つき、島にやって来た凛子ちゃんも ここで癒され、充電して、また都会に帰っていく。 そんな癒しパワーがある場所✨ 人にはそんな場所が必要だと思う。 多島美、ほんと綺麗だった。 この目で実際に見たくなった✨ 心洗われ、元気になれそうだから✨
強い人、強がる人、強くなりたい人
瀬戸内の小さな島を舞台にした傷ついた大人の再生のお話し。 父親が生前の母親との余生を過ごす為に移住した小さな島に、教職を辞めて派遣で働いていた娘がやって来て始まって行くけれど、葬式はどこで?娘は来なかった?とちょいちょい違和感も… 。 そんな細かいことは置いといて?集中豪雨で妻と子供を亡くした漁師の喪失と再生、そして教職を辞めた女性の挫折と再生、娘と孫を亡くした男に妻を看取った後の男等々、様々な人生をみせていくドラマはとても良かった。 ただ、話しの展開というか浜遊びからの流れがなんだか取って付けた様な茶番感が凄くて少し冷めてしまった。
【”二つの繋がれた空に舞い上がる黄色い風船。”深い喪失感から心を癒し、再生して行く姿を東出昌大、三浦透子が見事に演じた作品。未来に対する希望が垣間見えるラストシーンが、印象的な作品でもある。】
ー 妻を亡くした父(小林薫)の住む、瀬戸内海のある島を凛子(三浦透子)が訪れる。彼女は教師をしていたが鬱になってしまい、派遣社員として働いていた会社も期限が切れたから・・。
一方、島の漁師、憲二(東出昌大)は数年前の災害で、妻子を土砂崩れで亡くし、自らも駆け付けた事故現場で足に大怪我をし、心を閉ざし、笑顔無き暮らしをしていた。-
◆感想
・この作品で、憲二を演じた、東出昌大さんの冒頭、妻子が土砂で埋められたシーンの必死に砂を掘る表情や、中盤までの精気の抜けた男を演じる姿が印象的である。
元々、凄い俳優さんだがこの作品での彼の哀しみを抑制した演技は、流石だと思う。
・凛子を演じた三浦透子さんも、抑制した演技ながら確かなる存在感を醸し出している。
・名脇役の凛子の父を演じた、小林薫さんや、居酒屋を経営する明るいお母さんを演じた浅田美代子さんが、脇を固めており安心感がある。
浅田さんの存在が、この作品に貴重な明るさを齎している。
そして、亡き母を演じた原日出子さんも、良い。
■この作品は、大切な家族を亡くした憲二が、それでも一人生きる姿を前半パートは、哀しみを湛えて、後半パートはそこに、凛子や島の心温かき人たちが寄り添う事で、憲二が少しづつではあるが、再生して行く姿を丁寧に描いている点が良いと思う。
娘を亡くした義理の父(堀部圭亮)の前半と後半での憲二に対する、接し方の変化も絶妙である。
<ご存じの通り、ここ十年程、激甚化する気象により土砂災害、水害が絶えない。多くの方が亡くなり、深い哀しみを堪え乍ら生活している人が、多数いらっしゃる。
今作は、そのような状況下、”もう一度、教師になる。”と言って島を出る凛子に対し、それまで息子の面影と思い飛ばせなかった黄色い風船を二つ結んで大空に飛ばした憲二の心の再生と、未来に対する希望が垣間見えるラストシーンが、印象的な作品である。>
子役の有香も良かった
多島美の瀬戸内海にある小さな島で2018年7月の豪雨災害により妻と息子を亡くした漁師の憲二は、父に会うため島へやって来た凛子と出会った。彼女は教師だったが挫折し、自分の将来を見失っていた。そんな2人は少しずつ親交を深めていき、・・・てな話。 憂いのある演技の三浦透子が良かった。最近の教師は児童も生意気だし親もモンスターが居たりで大変なんだろうと思う。2018年7月の豪雨は凄まじかった。広島が舞台だけに、あの時の怖かったことを思い出した。 多島美の瀬戸内海は美しかったし、浅田美代子含め広島弁も自然で良かった。咲役の有香も良かった。 東出昌大も良かったのだが、彼は映画に出てるのに唐田えりかはほとんど出てこないのが不憫だ。彼女にも機会を与えてほしいと願う。
映像の美しさに埋もれないドラマが印象的な一作
浮かんでいるのかつり下がっているのか、不思議な風船が印象的なポスターですが、物語の筋そのものはそれほど不可思議なものではなく、主人公達の心の行程を一緒に辿っていくドラマとなっています。 2018年の西日本豪雨災害が物語に大きな影を落としているのですが、その描写は非常に生々しく、この災害を取り上げると知らずに鑑賞した方は少なからぬ驚きを感じると思います。『すずめの戸締まり』よりも描写としては直接的かも。豪雨災害で被災された方など、災害映像を見ることに躊躇がある場合には少し心積もりが必要かも知れません。 東出昌大演じる憲二は、かつては近隣の人にも頼られるほど活動的な島の男性だったのですが、三浦透子演じる凛子が父親を訪ねて来た時には、心を閉ざし、ほとんど誰とも口を利かなくなってしまっています。その姿はどうしても『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)のケイシー・アフレック演じるリーの姿が重なってしまうんだけど、本作はさらにその先を描こうとしているところに非常に好感が持てました。 彼がなぜ黄色い風船を毎日物干し竿に括るのか、わりと早い段階で察しがついてしまうんだけど、しかしそれでも彼が風船にこだわる理由を明らかにする慟哭混じりの告白には非常に心を掴まれます。 瀬戸内の青い海と空、そして風船の黄色の対比が鮮やかで、映像的にも非常に印象的な作品です。それでいてやたら美しい多島美を長々と見せるのではなく、あくまで物語の背景としてさりげなく用いているところも良いですね。 作中ではほとんど名前しか登場しない凛子の母、さわ(原日出子)の存在感が際立っていて、むしろ彼女中心で物語が回転しているという語り口も見事でした! 実は物語は島に生きる人々、というよりもある時点から島に移り住んできた人々を中心に展開しているんだけど、「島外移住」にこだわった物語上の必然性があったのかな?このあたりは、もし機会があったら監督に伺ってみたいところです。
最愛の人を突然失った漁師と瀬戸内海の多島美と穏やかな海が織りなす物語。心に余韻の残るいい映画であった。
監督:広島県出身の宮川 博至。製作:buzzCrow Inc. 瀬戸内海の島に移住し妻に先立たれた元教師の男性(小林薫)と、初めて島にやって来た娘・凛子(三浦透子)、その夫婦と親しい交流のあった漁師・憲二(東出昌大)。憲二は西日本豪雨で妻子を失い自分を責め人が変わったようになる。 島には住んだことのない凛子が重く心を閉ざした憲二と出会うところから物語が始まる。 人に死なれることと残された者。突然最愛の妻子を失った憲二がいつまでも受け止めることのできないその死。憲二が凛子との出会いで何かが変わっていくのだ。 凛子自身も自分の知らなかった母のことや、憲二の隠された苦悩を徐々に知ることで何かが変わっていく。 それらが瀬戸内海の多島美と穏やかな海、漁師や小学生との交流のなかで自然に、ゆったりと物語が進んでいく。大げさでもなく、早いカット割りでドラマチックに見せる訳でもなく。そこがいいのかもしれない。100分という時間であったが、長く感ずることはなくずっと惹きつけられて見ていた。所々に、子どもたちの愛くるしさや漁協の個性的な漁師たちのユーモアのあるシーンなどもよかったのだと思う。 タイトルの「とべない風船」。映画の中では憲二の自宅の物干し台に括られた黄色い風船がよく出てくる。この黄色い風船は単なる風船ではないのだ。 舞台挨拶で東出昌大がこれまででやったことがなく、とても難しい役どころだったというようなことを言っていた。その言葉が示すように、その悲しみ、憤り、無力感、苦悩、そして徐々に変わっていく様子は難しかったと思うがとてもリアルで素晴らしかった。 小林薫の落ち着いた存在感や浅田美代子の優しさもとてもよかった。 音楽も落ち着いていて心和ませる自然な曲であった。 全編広島ロケでスタッフも広島。有名な役者を使っての長編第ー作は全国でも是非多くの人に見てもらいたい映画である。
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