劇場公開日 2023年1月6日

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「最愛の人を突然失った漁師と瀬戸内海の多島美と穏やかな海が織りなす物語。心に余韻の残るいい映画であった。」とべない風船 M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0最愛の人を突然失った漁師と瀬戸内海の多島美と穏やかな海が織りなす物語。心に余韻の残るいい映画であった。

2022年12月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

監督:広島県出身の宮川 博至。製作:buzzCrow Inc.
瀬戸内海の島に移住し妻に先立たれた元教師の男性(小林薫)と、初めて島にやって来た娘・凛子(三浦透子)、その夫婦と親しい交流のあった漁師・憲二(東出昌大)。憲二は西日本豪雨で妻子を失い自分を責め人が変わったようになる。

島には住んだことのない凛子が重く心を閉ざした憲二と出会うところから物語が始まる。
人に死なれることと残された者。突然最愛の妻子を失った憲二がいつまでも受け止めることのできないその死。憲二が凛子との出会いで何かが変わっていくのだ。
凛子自身も自分の知らなかった母のことや、憲二の隠された苦悩を徐々に知ることで何かが変わっていく。

それらが瀬戸内海の多島美と穏やかな海、漁師や小学生との交流のなかで自然に、ゆったりと物語が進んでいく。大げさでもなく、早いカット割りでドラマチックに見せる訳でもなく。そこがいいのかもしれない。100分という時間であったが、長く感ずることはなくずっと惹きつけられて見ていた。所々に、子どもたちの愛くるしさや漁協の個性的な漁師たちのユーモアのあるシーンなどもよかったのだと思う。
タイトルの「とべない風船」。映画の中では憲二の自宅の物干し台に括られた黄色い風船がよく出てくる。この黄色い風船は単なる風船ではないのだ。

舞台挨拶で東出昌大がこれまででやったことがなく、とても難しい役どころだったというようなことを言っていた。その言葉が示すように、その悲しみ、憤り、無力感、苦悩、そして徐々に変わっていく様子は難しかったと思うがとてもリアルで素晴らしかった。
小林薫の落ち着いた存在感や浅田美代子の優しさもとてもよかった。
音楽も落ち着いていて心和ませる自然な曲であった。

全編広島ロケでスタッフも広島。有名な役者を使っての長編第ー作は全国でも是非多くの人に見てもらいたい映画である。

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M.Joe