劇場公開日 2022年10月14日

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「暗い月曜日」MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0暗い月曜日

2022年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

今となっては日本を代表する超大企業の会長に納まっている方も
二十数年前は一介の部長職だったわけで、
ご当人と酒の席で話している時に
週休三日になったら何曜日を休むか、との話題になり
多くの人が「水曜」「金曜」と答える中、
ご当人は「月曜」と答えていたのが印象的。

それが「最も得した気になる」とのことだが、
仕事を楽しそうにこなし、卓越した実績を上げて来た人間でも
そんな思いがあるのかと、意外に感じた記憶。

まぁ〔憂鬱な月曜日〕との楽曲や
「サザエさん症候群」なる言葉もあるくらいだし。

本作は手垢の付いた{タイムループ}ものでも、
調理の仕方でまだまだ面白い一本が造れるとの可能性を提示した
{ワンシチュエーション・コメディ}の秀作。

83分の短尺ながら、そこで描かれる内容の密度は濃い。

そもそも「タイムループ」の渦中に居る人間が
どうしてそれに気づくのかは、かなり重要な命題。
漫然と日々を過ごしている人間であればとりわけ。

ましてや今回の舞台は、
土曜日も日曜も無いほど業務に忙殺されている下請け制作会社。
事務所に泊まるなどは日常茶飯事で、
一週間のメリハリを感じられぬ日々を社員たちは過ごしている。

そんな中、最も早く「タイムループ」に気付いたのが、
そこから一番離れた業務の人間との設定は示唆的。

「このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」との副題にあるように、
気付いた人間は周囲を少しずつオルグしながら
「気付き」を敷衍して行くのだが、
そこで行われる「企業あるある」なサラリーマンのヒエラルキーを揶揄した表現や、
いかにもクリエィティブな集団らしい、
PPを使用したプレゼン形式の手法には大笑い。

代理店と制作会社、下請け・二次請けとの関係性も
皮肉に描きながら、とは言え実態を知っている側は
身につまされつつも爆笑をしてしまう。

一人の男の妄念が、
全世界的に同じ一週間をとめどなく繰り返させるループを作り出す
負のエネルギーの恐ろしさ(笑)。

とは言え、そこはかとないペーソスさも漂う終幕にはほっこり。

怖気をふるうと共に、
後悔の無い日々を過ごすことの重要性にも
改めて気づかせてくれる。

主役を演じた『円井わん』は勿論、
物語の鍵となる部長役の『マキタスポーツ』が激しく嵌り役。

いるよねぇ、業界にはこういった風体でノリの人が。

ジュン一