キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱のレビュー・感想・評価
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マリ自身が放つエネルギーが、科学と女性と人類の歴史を変えた
従来の伝記映画の枠に収まらない、創造性に富んだ意欲作だ。原題の「Radioactive」は、米国人女性アーティストのローレン・レドニスによる原作グラフィックノベルのタイトル(邦訳の題は「放射能 キュリー夫妻の愛と業績の予期せぬ影響」)と同じ。第一義的にはマリ・キュリーが命名した、ある種の元素から生じる放射現象を指す言葉だ。ただし、シンプルなこの題には、女性の社会的地位が低かった時代のフランスの学界で、ユダヤ系ポーランド人という出自により差別も受けながら、さまざまな壁をぶち破って自身の研究と夫への愛を貫き、科学界と社会、そして世界の歴史に影響を及ぼしていったマリの強烈な資質への比喩も込められていると思う。
プロデューサー陣と脚本家は英国のチームだが、監督にイラン出身・フランス在住の女性監督マルジャン・サトラピを起用したのも英断だった。彼女は映像作品を手がける前は漫画家としてキャリアを築き、自伝的漫画を自ら共同監督を務めてアニメ映画化した「ペルセポリス」が高評価された。サトラピの参加により、男性社会で抑圧される女性の視点、被差別者の視点が強調されただけでなく、マルチクリエイターらしい独創的な表現(米国での核爆弾の実験、広島への原爆投下、チェルノブイリ原発事故といったマリの時代よりも未来の出来事を幻想的に挿入する演出など)によって、ありきたりな伝記映画に収まらないユニークな意欲作となった。
ロザムンド・パイクには芯の強い女性の役がよく似合う。娘役のアニヤ・テイラー=ジョイは出番が少なかったが、演技派2人のアンサンブルで終盤の母と娘のエピソードを大いに盛り上げている。
この物語は今もなお続いている
キュリー夫人との出会いは、図書館で借りた伝記シリーズだったか。当時の私の頭ではノーベル賞に輝いた凄い人と分かっても、詳しい業績までは理解が全く追いつかなかった。それもそのはず。彼女(及び夫婦)のもたらしたものは伝記の枠組みでは到底語りきれるものではなく、それが世界に光をもたらすか闇をもたらすかは、100年、200年という長いタームで見つめる必要があるからだ。この点を克服すべく、本作は極めて実験的な手法と構成で観客に「その後」を突きつけており、全てが成功しているとは言い難いが、鮮烈なインパクトをもたらしているのは確かだ。一方、パイク演じるキュリー夫人は、決して人好きのするタイプでなく、自分の信じた道をひたすら突き進む頑なさに満ちた人として描かれる。男性ばかりの大学組織、学術界で彼女が切り開いたものは大きい。祖国を離れた者としての立場が、イラン出身のサトラピ監督と重なるのも興味深い点と言える。
まさか今の映画でロイ・フラーを見られるとは…
アニャ・テイラー=ジョイの過去作チェック7本目
恥ずかしながら私、もういい歳なのにキュリー夫人の伝記を読んだことがなかった…名前くらいしか知らなかった…
キュリー夫人の伝記って小学校の図書室とか学級文庫みたいなところに、二宮尊徳とか野口英世とかエジソンとかコロンブスとかナイチンゲールとか、そんなラインナップの中に必ずありますよね
だから小学生でも名前は必ず知ってる
でも私はこれまで1mmも伝記を読む気にならなかった
二宮尊徳は校庭の銅像で一目瞭然、苦学して出世した人の代表じゃないですか
野口英世は偉いお医者さん、エジソンは世界一の発明家、コロンブスは新大陸を発見した探検家、ナイチンゲールは一番最初の看護婦さん
この人達が立派な人だということは、子供でも一発でわかるじゃないですか
でもキュリー夫人は何した人なのか全然ピンと来ない
ていうか、アニャが出演してなかったら本作も絶対に見なかった作品ですよ
私が今までまったく興味を持てなかったキュリー夫人の伝記映画…これが私にとっては超名作でした
キュリー夫人ってちょっとあり得ないくらいの偉人だし、ちょっとあり得ないくらい劇的な人生を送った人なんですね
女性で初めてノーベル賞を取った人だし、人類で初めてノーベル賞を2回取った人だし、現在までにノーベル賞を2回取った唯一の女性だし、夫もノーベル賞を取った人だし、娘もノーベル賞を取ったし、婿もノーベル賞を取ってる
まあ要するに、女性に限らず歴史上もっとも頭いい人と言っていいくらいの業績はあるわけですよ
さらに科学者としての功績を凌駕するほどドラマティックな人生
鑑賞後、即座にネットでキュリー夫人をバババーッと調べたのですが、とても1本の映画に収まるスケールの人生じゃないんですよ
本作はむしろよくここまで見事に1本の映画として仕上げたなぁと、改めて舌を巻きました
キュリー夫人の伝記、小学生だとチト早いかもしれないけど、高校生くらいで読書感想文の指定図書として全員強制的に読ませてOKなレベルだと思いました
昔のことですから当然、女性の生き方として超一流の研究者・科学者をやっていくには諸々の障害があります
そもそも超天才で頭良すぎるので、一般人ばかりでなく知識人でも倫理観や価値観を合わせづらいということはあったでしょう
この映画では、旦那さんがホントいい人で、キュリー夫人のアイデンティティから切り離せない存在
いつまでたっても彼女が「キュリー夫人」、つまりキュリーさんの奥さんと呼ばれるのか分かる気もしますし、このセンス無さ気な邦題もちょっと許せます
そもそもこの映画、わりと早い段階でロイ・フラーが出てきて、もうその時点でガツーンとやられちゃったんですよ
ロイ・フラーは個人的に以前、ネットで調べまくったことがあったんです
まさか今の映画でロイ・フラーを見られるとは…
ロイ・フラーというのはザックリ100年前のパリのアートダンサーで、ジュディ・オングの「魅せられて」の元ネタですよ(憶測)
彼女のパフォーマンスはロートレックにインスピレーションを与えたばかりではなく、確か最初期の映画(エジソンとかリュミエール兄弟とか)のモチーフになってますよ
ロイ・フラーを登場させるというのは映画人として意外にチャレンジングな試みだったのでは?
そしてロイ・フラー以外にもエッフェル塔、自転車、自動車、降霊会、サマリテーヌ、第一次世界大戦等々、当時のフランスの時代性を象徴的に示すモチーフが取り扱われているし、原爆や原発事故などキュリー夫人が研究した放射能の及ぼす悪影響についてもきっちり取り扱われていて、伝記映画としてのクオリティが頭抜けてる印象
さらに主演のロザムンド・パイク(1979年生、公開時41歳)の演技は圧巻!
この映画、イギリス映画だからか、そんなにヒットも評価もされてないような気がしますが、個人的にはかなり高く評価しますよ
さてお目当てのアニャ・テイラー=ジョイ(1996年生、公開時23歳)は、キュリー夫人の娘の役なんですが、お顔がロザムンド・パイクと全然違う系統なので、とても母娘に見えない…
客観的にはミスキャストですが、彼女のお陰で本作を見ることができ、キュリー夫人の人生を知ることができたのでプラスマイナスゼロってことにしておきます
喜びよりも苦しみが目立つ展開
ロザムンドパイク扮するマリーキュリーはまだ独身時代に場所を使いすぎると研究室を追い出された。
サムライリー扮する夫のピエールとは本を落とした時に偶然知り合い研究室の提供を受けた。
夫にめぐり逢い夫の助けもあって研究が進んだんだね。でも病院には入らないとか偏屈なところもあったんだね。しかしラジウム発見が広島の原爆を導いたとしていたし、ノーベル賞受賞を夫ひとりで受けたと夫を非難している。まあだからキュリー夫人なんだなと。全体的に悪くはないが、例えばラジウム発見の感動とかわくわく感が得られなかったし、妻としての傲慢さとピエールの咳ばかりが気になったなど喜びよりも苦しみが目立つ展開だったね。ただ戦場へのレントゲンの導入の戦いは見事だったよ。
放射能と熱量
ポーランド出身のマリ・スクウォドフ スカは、パリのソルボンヌ大学で女性差別により十分な研究ができないでいた。その時ピエール・キュリー博士と知り合い、結婚。夫婦で研究に励み、ラジウムとポロニウムを発見し、二人でノーベル物理学賞受賞。しかしピエールは、事故で亡くなってしまう。
夫婦でノーベル賞、さらに夫人は後に化学賞も受賞、さらに娘夫婦もノーベル賞受賞、と類まれなノーベル賞一家。ただキュリー夫妻が、交霊会に参加したりしていたのは意外でした。また夫人は、スキャンダルに巻き込まれていたにもかかわらず、二度目の受賞をなしとげていて、その熱量に感嘆。
エノラゲイ、ファットボーイ、放射線治療、原爆ショー、チョルノービリ、と放射能のその後の影響が挿入されています。
キュリー夫人の功績については既に語り尽くされている。 本作は期待以...
キュリー夫人の功績については既に語り尽くされている。
本作は期待以上でも以下でもなかった。
ただ、夫人が不倫でバッシングされていたこと、娘もノーベル賞を受賞していたことは知らなかった。
それにしても本作での夫人は気が強く、傲慢な「嫌な女」として描かれているが、実際はどうだったのだろう。
事実の重みにまず打たれる。新しいことをする人は皆そうか。そして女性...
事実の重みにまず打たれる。新しいことをする人は皆そうか。そして女性の問題。
妻の方が優れていたことも知らなかった。しかし二人は幸せだった。彼女の性格についてもびっくりする。そしてその強さ。
科学者として女性としてマリー・キュリーはどんな人だったのか
キュリー夫人、一言で言えば可愛げ皆無(こういう言い方自体差別的かな?すいません)の女性でした。傲慢でプライドが高く負けず嫌いで(こういう男で魅力的な人ってたくさんいるよね)。そんなマリーのすべてを夫ピエールは愛し、またマリーもピエールを愛した(素晴らしい)。
キュリー夫人が発見し研究したラジウムとポロニウム、そして放射能の功罪を後の歴史的事実(日本への原爆投下、癌の放射線治療、チェルノブイリの原発事故…)と絡め、またピエールやマリーの健康被害など、多くの負の側面から考察している。僕自身はこの放射能、長い目で見れば人類史に貢献する偉大な発見、研究だと信じている(当たり前ですね)。
また、ピエールの死後、不倫によって世間から徹底的に叩かれたことなど、初めて知るエピソードもあった。ポーランド人であること(だからユダヤ系?)など、あってはならない理由でさらに叩かれる。移民の女性が生きる難しさなど、当時の社会状況も垣間見ることができた。
女性とは?夫婦とは?科学者とは?そして放射能とは?たくさんのことを考えさせてくれる素晴らしい映画でした。滑り込みで観たんだけど、スルーしなくて良かった!です。
腕組みして自分を守り世界と闘う
この映画はキュリー夫人が主人公というより原題のRadioactiveがまさに主題の映画だ。頭脳と背中がひんやりして恐ろしく、心は熱量でいっぱいになりそれが希望と絶望の両方に向かう。抽象的で時空を超えた映像は恐怖と愛に満ちていた。
ロザムンド・パイク適役。でも別のタイプの強さと明るさに溢れる彼女が好きだから見ていて辛かった。今年だか昨年出版された小説 "Lessons in Chemistry"を彷彿とさせる場面と登場人物の造型が多かった。ヘアメイクと衣装が素晴らしかった。そして長女・イレーネ役のアニャ・テイラー=ジョイにこの映画でも会えた。彼女が出るとワクワクする。
原題はRADIOACTIVE
幼い頃、なぜか伝記を繰り返し読んでいた記憶のあるキュリー夫人。女性なのにどうやって功績を残せたのか気になっていたところで、アメリカ映画になると知り、これ幸いと鑑賞。
キュリー夫人の伝記映画であることは間違いないものの、明らかに年代の違う原子力にまつわる事柄が挟まれるため「あれ?」と思っていたら、最後にに"RADIOACTIVE"と出てきて納得。原題を知らなかったからこその困惑でした。今に続く原子力という問題の始まりとその過程を丁寧に(とはいえスピーディーに)じっくり観ることができました。
自分が今社会で働いて稼ぐことができているのは女性でありながら頑張った先人たちのおかげ。とはいえこれほどパワフルかつ男性の助力がなければ名が残らないという哀しさも。母親でありながら研究を続けてノーベル賞を受賞し、大学教授にもなった。その途方もない努力が生んだ功績を、しかし男性に譲ることなくきちんと主張できた人がどれほどいたのか。
何かを発見しなければ!という追求心がなければ、発見されなかったかもしれない力、レントゲンによる恩恵をたくさん受けつつ、なにかと原子力による被害の多い国に住みながら、しみじみと噛み締められる良い映画でした。
アニャ・テイラー=ジョイ
偉人と言っていいのか?
放射線、放射能、に関与した、科学者キュリー夫人を描きます。
超常現象的な演出あり。
広島やチェルノブイリにも少し触れられてます。
アニャ目当てで観たんだけど、アニャが出てくるのは最後30分ぐらい前で、活躍時間は10分ぐらい(笑)
娘役です。
でも、観やすかったし、面白かった♪
薬が毒に成り、毒が薬になる。
二人の天才が夫婦となり世紀の大発見をするのにはとてつもない蹉跌があっただろうけど、それがなければ大発見とはいかないものだ。
それが同じ道を歩むもの同士、うまく行くときは何乗にもなって上手く行く。
それが娘夫婦も同じくノーベル賞を受賞するのだから驚きだ。
その研究対象である放射能の功罪に付いて過去から現在まで織りまさぜて考察するのだが、
良薬も過ぎれば毒となり、
毒性のない良薬はない。
さて、映画として何を観るか?
僕は天才の生き様を垣間見た気がする。
だが、映画として少し人種差別の言語が多過ぎた気がする。
原題はRadioactive、の光と影みたいな感じか 誰もが功績を...
原題はRadioactive、の光と影みたいな感じか
誰もが功績を知っているキュリー夫人の伝記映画 こんなに傲慢で自分の欲求に素直な人だったのかと驚く あのくらい決め込まないと当時女性が化学研究なんて出来なかったのかもしれませんが
昔は抽出するのも大変な時間と労力が掛かっていて、現在のニュートリノ検出みたいだと思った 功績と功罪については現代の映像で描かれていて、降霊、幻想とか何故か科学にそぐわない場面も有り
その破壊力たるや衝撃的だが、当初は人体に対する影響も未知だったろうし、後の人類の利用方が悪いのかもしれないので、発見が悪だったかと問われれば何とも言い難い 伝記だからから?イマイチ面白くなかった
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