「この物語は今もなお続いている」キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
この物語は今もなお続いている
キュリー夫人との出会いは、図書館で借りた伝記シリーズだったか。当時の私の頭ではノーベル賞に輝いた凄い人と分かっても、詳しい業績までは理解が全く追いつかなかった。それもそのはず。彼女(及び夫婦)のもたらしたものは伝記の枠組みでは到底語りきれるものではなく、それが世界に光をもたらすか闇をもたらすかは、100年、200年という長いタームで見つめる必要があるからだ。この点を克服すべく、本作は極めて実験的な手法と構成で観客に「その後」を突きつけており、全てが成功しているとは言い難いが、鮮烈なインパクトをもたらしているのは確かだ。一方、パイク演じるキュリー夫人は、決して人好きのするタイプでなく、自分の信じた道をひたすら突き進む頑なさに満ちた人として描かれる。男性ばかりの大学組織、学術界で彼女が切り開いたものは大きい。祖国を離れた者としての立場が、イラン出身のサトラピ監督と重なるのも興味深い点と言える。
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