「ポリコレ・ワールド 現ディズニーの世界」ストレンジ・ワールド もうひとつの世界 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ポリコレ・ワールド 現ディズニーの世界

2023年1月22日
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鑑賞方法:VOD

単純

寝られる

映画で人種の多様化やLGBTを描くのは悪い事ではない。寧ろ、素晴らしい事だ。映画を通じて伝えられるメッセージ、自由。
ハリウッドでは長らくホワイトウォッシングが問題視され、ようやくそれが見直され始めた。
しかし、最近のディズニー作品には甚だ疑問を感じる。
昨年公開の『バズ・ライトイヤー』。バズの相棒女性が同性愛者。昨年配信の『ピノキオ』実写版。ブルーフェアリーが黒人に。そして今夏公開予定の『リトル・マーメイド』実写版。赤毛白人少女のアリエルが黒人少女へ。
何も私は差別主義者ではない。ただ、最近のディズニーの人種やLGBT描写に絶対的にそうでなくてはならない必要性を感じないのだ。
『リトル・マーメイド』なんて人種を変える必要は何処にある? ディズニーはオーディションで純粋に抜擢したと言っているが、真の理由は…?(これについてはいずれ、作品を見た時にまた)
ディズニーの如何にもな今の世に優等生ぶって配慮したあざとさ見え見えに、ほとほとうんざり。
本作も然り。いや、その極み。
“ストレンジ・ワールド”じゃなく、“ポリコレ・ワールド”。

主人公の白人男性。妻が黒人。息子はハーフ。
異人種の結婚は今や珍しい事ではないが、それも含め息子をハーフにした理由は…?
特にナシ。
息子は同性愛者でもある。好いてる男子がいる。
息子のマイノリティーな内面が描かれるのか…?
特にナシ。
飼い犬が片足が無い。そんなハンデを背負いながらも、何か秀でた活躍を見せるのか…?
特にナシ。
男女は勿論、白人、黒人、アジア系、同性愛者に障害者(犬)…。
あらゆる人種や多様性をぶっこみ、これが今のハリウッドの求めるお手本とでも言うかのように。
世界は一つで、それらの設定について何も触れられていないのは偏見などではなくそれが当たり前で自然に受け入れられるものである事を伝えているのだろうが…
もう一度言う。私は差別主義者ではない。
絶対的にそうでなくてはならない必要性が感じられないのだ。
例えば近年なら、『ミラベルと魔法だらけの家』は舞台がメキシコだから当然メキシコ系だし、監督ドン・ホールの前作『ラーヤと龍の国』は古代のアジアのような世界だからアジア系。監督の代表作『ベイマックス』は日本オマージュだから日本を彷彿させるような設定やキャラ。
本作は架空の国だから様々な人種が平等に暮らしている…のだろうか? 何か、少なからず納得いく理由付けが欲しかった。
何だかまるで話の展開より、このキャラを黒人にしよう、このキャラをアジア系にしよう、LGBTや障害キャラも登場させて…と、100%必要ではないキャラ設定が優先されたような気がした。

これで話が面白かったら、まあまだ見れたのだが…、
違和感しか覚えないキャラ設定に拍車をかけるかのように、話もつまらない。
本当に、近年のディズニー作品ではダントツのワースト。
話は…

架空の国、アヴァロニア。
かつては文明未発達だったが、ある冒険の過程で発見された植物“パンド”の資源により豊かな国に。
が、そのパンドが枯渇。危機に見舞われた国を救うべく、解決の糸口が秘められている地底世界への探索チームが編成。
パンドの発見者である農夫サーチャーも加わるも、行方不明になった冒険家の父イェーガーへのコンプレックスから冒険嫌いになっていた。ひょんな事から息子イーサンも紛れ込み、地底世界で知った秘密とは…。

ジュール・ヴェルヌのかの名作を彷彿させるような地底アドベンチャー。
地底世界のイメージを覆すようなカラフルでファンタスティックな世界。
3世代の親子の絆…。
ディズニーらしい冒険ファンタジー!…と言いたい所だが、冒険の目的も展開も、そもそもの話それ自体も全くワクワク魅力さを感じない。
不思議な世界、奇妙でコミカルで可愛い異生物キャラ、ユーモア、冒険×アクション、危機、奇跡、感動…全てが予定調和のお決まりの連続で、何処かで見た事あるような既視感だらけ。設定も展開も本作だけのオリジナリティーを感じない。
ドラマの軸であろう3世代の親子の絆も弱い。弱すぎる。
これほど楽しさも面白味も感動も感じなかったディズニー作品は珍しい。
作り手に聞いてみたい。本当にこれで、これまでの名作群と並び、『アナ雪』のような大ヒットを目指したのか、と。

ディズニーは今年、創立100年を迎える。節目のアニバーサリー・イヤー。
現在のディズニーの体制を確固たるものにしたCEOの復帰が伝えられたばかりで(前CEOはいまいち評判悪く)、今後の動向が気になる所。
目下、配慮し過ぎたポリコレ・ワールドでさ迷い中。

近大
まちさんのコメント
2023年8月10日

私はこの物語は種を超えた共生、相互理解がテーマだと感じ、その上で人間のキャラクター達は多人種であった方がそのテーマの困難さ、重要性をより強調出来るので良いと思ったのですがいかがでしょうか。
またイーサンは同性愛者だとは公言していません。公言する必要も無いので誰も彼のセクシャリティを知る由もないです。
差別の殆どは人々の潜在意識により表象します。なので「私は差別主義者ではない」という自認とは一定の距離をおいた方が良いかと存じます。
原作と大きく異なるポリコレには私も懐疑的ですが、ディズニー映画の批評はその歴史も相まって難しいです。貴方が許容されているミラベル、ラーヤ、ベイマックスにも十分なポリコレ要素がありますので、慎重な考察が必要かと思われます。
またこの映画について既視感があるとの事ですが、私は特に極彩色が調和を持ってグロテスクに、サイケデリックに描かれた美術設計を魅力的だと感じたので、類似した作品をご教示くださると幸いです。

まち
YOUさんのコメント
2023年1月22日

激しく同感です。現地アメリカでも炎上したようです。
作品の稚拙さも合わせて赤字「爆死映画」になるとのこと。

YOU