「リアルを追求したいのか、ファンタジーを追求したいのかがよく分からない」マルセル 靴をはいた小さな貝 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
リアルを追求したいのか、ファンタジーを追求したいのかがよく分からない
言葉を喋る架空の知的生物を取材対象として、擬似ドキュメンタリーを作るという発想は面白い。
その取材対象が、お婆さんと二人暮らしをしている子供の巻貝であるというところは意表を突いているし、お喋りで、生意気盛りで、可愛らしい彼のキャラクターも魅力的である。
特に、小学校低学年位の知識と経験しかないはずの彼が、時々発するハッとさせられるような含蓄のある言葉は、物語全体に深みを与えているように思える。
その一方で、モキュメンタリーという制作手法と、ストップモーションアニメという表現方法が、うまく噛み合っているようには思えないところは気になる。
いかにも現実の出来事であるかのように見せかけるモキュメンタリーと、手作り感満載で「作り物」であることが明白なストップモーションアニメとが、水と油のように乖離してしまっているように感じられるのである。
手持ちカメラで撮影したようなブレる画面の中で、ストップモーションアニメのキャラクターが動くといった高度な技術も用いられてはいるのだが、リアルを追求したいのか、ファンタジーを追求したいのかが、かえってよく分からなくなってしまっている。
仮にファンタジーであるならば、物語から「ドキドキ」であるとか「ワクワク」であるとかを感じることができないのは、致命的であると言えるだろう。
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