「ヒップホップであってバラードのよう」みんなのヴァカンス ゆちこさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒップホップであってバラードのよう
偶然集まった、どうしようもないけど愛すべきキャラクターたちの一夏のヴァカンス。
このどうしようもなさが味になっていて、人生のキラキラした部分に限らず、ままならなさや不運が重なるリアリティがなんだか心地よく感じる。それでも時折り訪れる幸福な瞬間との対比が美しさを強調していた。
静かに笑わせてくるタイプのコメディも、あざとさがなくて癖になる。劇場で控えめに聞こえる笑い声に、こちらも同じ気持ちやで。と謎の連帯感を感じました。
演者はフランス国立高等演劇学校選抜で、脚本はワークショップを通してパーソナリティを引き出して創ったらしく、彼らから滲み出ていた生っぽい人間性に納得した。
特に固有のものもない南フランスの田舎町での日々が、やけに特別に見えてしまう。10月初旬、名残惜しい夏をこの映画によって未練残さず締めくくれた。行ってないのに最高のヴァカンス体験させてくれた。
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