劇場公開日 2022年8月20日

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「イケてない男たちのすれ違いと邂逅」みんなのヴァカンス 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0イケてない男たちのすれ違いと邂逅

2022年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2020年。ギヨーム・ブラック監督。セーヌ川沿いのイベントで意気投合して一晩を過ごした彼女を追って、600キロも離れた避暑地を目指す若い男。おとなしい友人を誘い、同乗アプリで女性と偽って車を持つさらに若い学生を捕まえる。3人の男がくりひろげる避暑地での数日間。
川から川へ、ダンスからダンスへ。知らせもせずに女性を訪ねてしまう独りよがりな男と、子持ちの主婦や人妻をついつい助けて恋に結びつかない無害な男、そして母親に頭が上がらない初心な若い男。イケてない男3人(とくに女性をめぐって)のすれちがいと邂逅。単純に物語がべらぼうに面白い。キャラクター造形に無理がなくセリフの端々まで気が利いている。出演者は学生だということに驚き。
端正な画面と的確なカットの編集もここちよい。川は泳ぐのではなく飛び込んでしぶきをあげるものであり、自転車は二人乗りか二人並んで乗るものであり(そういえば、二人と書いて気づいたが、映画のなかの人物はなんらかの形で二人一組のペアになっている。友人のペア、姉妹のペア、いびきをかく男のペア、怪我をするペア、など。一度あることは二度ある)、川は木々かフェンス越しに覗くものである。無害な男が子持ち女性の気を引こうと赤ちゃんをあやす場面は、マネ「草上の昼食」の構図を狙ったものに違いない。
どこがどうとはいえないが、濱口竜介監督と同時代の映画作家だなと思わせる。最高。

文字読み