「恋愛至上主義の社会の中で」そばかす 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛至上主義の社会の中で
他者に恋愛感情を抱かない女性の葛藤を描く作品。社会はなぜか恋愛至上主義的にできている。社会を構成する上で結婚制度は大きな柱となっていると言えるが、結婚とは愛を持ってなすことだというのが、なぜか大前提となっている。「恋愛」という日本語は明治期に成立したと言われるが、それ以前の時代では結婚は個人のものというより、家と家のためのもので経済的事情によるものだった。明治になって西洋化の一貫で、愛の結婚という概念に置き換わっていったに過ぎない。つまり、愛の結婚は、別に絶対の真理でもなんでもないわけだ。
江戸時代の家のための結婚が良いというわけではないが、現代社会にもふさわしい社会の在り方や結婚制度があってしかるべきではないか。必ずしも性愛によって結びつくものじゃなくてもいいのではないか。むしろ、そろそろそういう新しい制度や習慣のあり方を模索した方がいいのではないか。
この映画はそういうことを考えさせてくれる。近代の社会を支えた制度自体がもう合わなくなってきているんだと思う。そういう意味で、本作の主人公は全く珍しい存在じゃないし、多くの人の共感を呼ぶはずだ。
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