「前向きな逃走」そばかす ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
前向きな逃走
ふたつのエピソードで、主人公の架純の人生観が焙り出される妙味。
彼女が語る、合コンでのトム・クルーズの映画のエピソード。
トム・クルーズと言えば、『トップガン』や『ミッションインポッシブル』みたいに、何か目的に向かって走る役が多い。だが、『宇宙戦争』は違う。港湾労働者の彼が、とにかく全力疾走で逃げ回る。
目的に向かって走ることが正しいわけではない。時には走らされている自分を解き放って逃げてやろう。
もうひとつはシンデレラのエピソード。
幼稚園の先生になった彼女が、学芸会で電子紙芝居を作成することに。そのナレーションを彼女の同級生に頼んだところ、男目線のシンデレラの話を変えようということに。
シンデレラは王子様に見初められるために生きているわけではない。そんな申し入れ断っちゃおう。
エピソードの根底に多様性の社会を映し出すのは短絡的だと思う。人並みの目的のために走らされている自分だったら、時には逃げてもいいのでは。人並みの目的が、結婚して安定した生活を送ることだったとしても。逃げることは、必ずしも後ろ向きな行動ではないという感性もあっていいのでは。
架純には恋愛感情も性欲もない。が、そもそも恋愛感情とか性欲は、男目線が創り出した幻想にすぎないのかもしれない。
観ているうちに、三浦透子(架純)と前田敦子(架純の友人)の推しになっていた。私は結構昔気質の男だが。
想定外に、彼女たちの「前向きな逃走」に前のめりになっている自分がいた。
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