「押し付けないで!」そばかす サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
押し付けないで!
前田敦子とか伊藤万理華とか、大好きな女優がたくさん出てるから〜という軽い気持ちで見たんだけど、そういう話だったんだ!LGBTQIAを扱った映画なんだけど、主人公の気持ちが作品にも反映されていて、全く押し付けがましくない。すごく見やすい上に、色々と考えさせられる、素晴らしい作品でした!
結婚とか恋愛とか、誰かを愛し、愛されることが女性の全て?1人は孤独で寂しくて可哀想?そんなことない!価値観を押し付けられる主人公が、何故かすごく愛おしくて、すごく感情移入してしまう。ドライブ・マイ・カーの時より、三浦透子の良さが生かされており、初っ端からグイグイ引き込まれちゃいました。テイストとしては「勝手にふるえてろ」とどことなく似ているんだけど、本作の方が圧倒的に共感度が高くて好印象。誰も強くない!だって人間だもの。
なにか大きな出来事や変化がある訳では無いんだけど、笑えるシーンだったり印象に残るシーンがたくさんあって、色んなエピソードが上手に構成されているとても丁寧な作品。いい意味で日本映画っぽくないというか、かと言って外国映画を見ている感覚じゃないんだけど、すごく上品で、監督が劇団の主宰だからか舞台っぽい雰囲気が感じられた。ココ最近の映画では段違いで居心地がいい作品でした。
語りたいシーンは沢山あるんだけど、個人的には告白を受けるシーンがお気に入り。ちょっと目を覆いたくなるようなキツい場面でもあるんだけど、そんな状況で主人公の佳純(三浦透子)が必死になって「君の思っていることとは違うんだ!」と弁護しようとするその姿が、なんだか共感出来て微笑ましかった。楽しかったことは事実。一緒にいて笑ったことも事実。ただ、恋愛感情が湧かなかった。それだけなのに。
音楽も映像も非常に綺麗で、ずっと心に留めておきたい一作。宇宙戦争でトム・クルーズの走る姿が好きだと言った主人公に、また共感。そんな本作もまた、走る姿がカッコイイ。今泉力哉監督っぽいシチュエーションボケみたいなのも楽しかったし、そこから深いテーマにすっと移り変わっていったのも秀逸で最高。キャラクターもまたいちいち面白くて、人間臭くて、みんな自分の夢だったり目標だったりに向かって走っていて、爽快で超気持ちがいい。
昨年は「彼女が好きなものは」だったが、今年は本作。世界はクソみたいだけど、ひとりじゃない。世の中、まだ捨てたもんじゃない。こういう生き方したいな、と思える人物が主人公含めてたくさんいて、背中を押してくれるというよりも、そっと隣に居てくれる、そんな映画でした。見やすくて、笑えて、勇気づけられ、ちょっと感動できて、考えさせられる、素晴らしい作品です。ぜひ、映画納めに!