「全体主義のアレゴリー。最後に勝つのは、個人の意思と友情。」映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア) TWさんの映画レビュー(感想・評価)
全体主義のアレゴリー。最後に勝つのは、個人の意思と友情。
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自分の意思と引き換えに、用意するプログラムをこなすことによって、誰でもパーフェクトかつ幸せになれるというユートピア。
大人にとっては、このユートピアは、共産主義やファシズムなどの全体主義を想起させるものに違いない。
作中、ジャイアン、スネ夫、しずかは、その全体主義の歯車となり、つまり、このユートピアが理想とするような善人となり、のび太にも優しく接するようになる。
一見、善かれと思うところだか、自分の意思を喪失してしまった、ユートピアの従順な下僕である。
のび太は、洗脳の効き目が効かないので、そうしたジャイアンたちの変わりように危機感を抱く。
もしかしたら、ユートピアの住人にとってはそれが一番よいのかもしれない、しかし、のび太、ドラえもんは、このユートピアの欺瞞に対して、戦いを挑む。
ジャイアン、スネ夫、しずかも友情を起に意思を取り戻し、一緒に戦うことに。
最終的に、このユートピアは消滅し、その首謀者は逮捕される。
言わば、民主主義的な価値観の勝利で幕が降りる。
拮抗し合っていたテーゼとアンチテーゼだが、最終的に、全体に従属し善人・幸福・パーフェクトになるよりも、個人の主体性や様々な人間の多様性、そちらの方が尊くあるべきだというメッセージが打ち出される。
子供向けの映画であるが、寓話的要素があり、大人も楽しめる映画だった。
ドラえもんの映画にしては珍しいと思った。
大人向けのテーマを子供向けの映画に落とし込むことは難しいと思えるところ、製作者側はそれをうまくやってのけ成功させたように思える。
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